オーストラリアは観光地が多く、日本人だけで年間に47万人近くが訪れているほか、さまざまな国からたくさんの人が行き来しています。そんなオーストラリアへの留学には、ビザ申請などのさまざまな手続きが必要ですが、渡航先では自分の身を守ることも忘れないようにしておかなくてはいけません。
とくに渡航先での病気は何かと不安になるものですし、体調を崩してしまえば海外生活も台無しになってしまいます。こちらのコラムでは、オーストラリア留学で予防接種が推奨されている理由をはじめ、現地での医療機関の診療方法や留学保険などについてご紹介していきます。オーストラリアへ渡航する前に、万全の態勢を整えておきましょう。
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オーストラリア留学で、予防接種は必ずしなければいけないというものではありません。オーストラリアでは、発展途上国で起きているような感染症などの病気が流行しているわけではないからです。ただ、それでも病気にならないという保証はどこにもありません。
病気の感染経路はさまざまで、現地生活でも危険は潜んでいます。とくに渡航者の多いオーストラリアでは、外国から感染症ウィルスが持ち込まれるおそれもあるため、予防接種が推奨されているのです。ここでは、オーストラリアへの渡航前に推奨する予防接種の種類をご紹介します。
・破傷風……先進国であっても、けがの傷口などから破傷風ウィルスが検出されることがあるのです。破傷風の予防接種は1度おこなえば、約10年間は免疫の効果が持続します。接種をしたことがない場合、もしくは接種から10年以上経過している場合には、渡航前に2~3回の接種が必要です。
・A型肝炎……A型肝炎ウィルスは経口感染なので、飲食物に注意しましょう。症状が重いと、1か月以上の入院が必要とされることもあります。
・B型肝炎……B型肝炎ウィルスは血液や体液がおもな感染経路になり、輸血や注射針によって感染が起きてしまうこともあります。健康な成人であれば重度になるケースは少なく、自然に治っていく軽度の感染がほとんどですが、ごくまれに死に至るようなケースもあるため、油断は禁物です。
・日本脳炎……日本脳炎のウィルスをもった蚊に刺されることで発症し、発熱や倦怠感のほか、意識障害などの重篤な症状になることも多く、後遺症が残りやすい病気です。オーストラリア北部に滞在する場合は、予防接種が推奨されています。
・狂犬病……狂犬病は、動物にかまれることで感染する病気です。発病してしまうと死に至ることが多く、さまざまな動物が生息しているオーストラリアではとくに注意しなければなりません。
・風疹……発熱やリンパ節が腫れるウィルス性の発疹症で、のどの痛みや目の充血など、風邪に近い症状があります。一過性ではありますが感染力が高く、人から人へ感染していく病気です。オーストラリア政府は、子どもと多く接する機会のある人に予防をすすめています。
・インフルエンザ……オーストラリアの季節は日本と真逆のため、患者が多くなる流行時期は4~10月です。日本と同じように大流行することも多いため、しっかりと予防をしておきましょう。
オーストラリアでは、日本で見られないような病気や感染症もあります。オーストラリア国内のみの滞在なら予防接種の義務はありませんが、感染症から身を守り周囲への二次感染を防止するためにも、軽視せず接種することが大切です。
予防接種は厚生労働省が管轄している検疫所をはじめ、トラベルクリニックや渡航外来のある医療機関などでおこなっています。厚生労働省が運用しているFORTHというサイトでは、予防接種ができる機関をデータベースから検索できるので、そちらを活用するのもよいでしょう。
予防接種はただうてばよいというものではなく、渡航期間や自分の年齢などによっても必要なワクチンが異なるのです。国立感染症研究所の公式ページでは、年齢に応じた予防接種のスケジュールが出されています。渡航前には、自分の年齢に相応するワクチンの必要な接種がすべてできているかを確認しておきましょう。
また長期滞在の場合には、学校などによってワクチンの接種が要求される場合があるので、こちらも確認が必要です。接種する医療機関で、海外渡航者向けの予防接種の種類や接種日程を相談してみましょう。
海外渡航の場合、予防接種をおこなう時期には注意しなければなりません。ワクチンによっては2~3回にわけてうたなければならない場合や、それぞれを同時に接種できないこともあるからです。
また、オーストラリア渡航の予防接種であれば、遅くても2か月前くらいにはすべて済ませておくことをおすすめします。予防接種を確実に終えて免疫をつけておかないと、十分な効果が発揮できず感染症にかかってしまうおそれもあります。
時間がなくて予防接種ができなかったということにならないよう、余裕をもって予防接種の計画を立てておきましょう。
オーストラリアの医療制度は、日本と大きな違いがあります。たとえばインフルエンザはオーストラリアでも予防接種はできますが、判定結果が出て薬が処方されるまで数日かかることもあるようです。もし現地で病気やケガをした場合には、制度に従って受診しなければいけないということも覚えておかなくてはいけません。
日本であれば、病気の症状に応じて外科や内科など、最初から希望する専門医に診療を受けることができます。
一方で、オーストラリアで医師の診療を受けるには緊急の場合をのぞいて、まず一般開業医であるGPでの診療が必要になります。すでに日本で病気が診断されていて専門医にかかりたい場合でも同じで、GPの診療を必ず最初に受けなくてはならないのです。
GPは事前に予約が必要で、軽症のけがの手当てや薬の処方などをしてくれます。さらに専門医に診てもらうためには、GPが専門性の高い治療が必要と判断して紹介状を書いてもらわなければなりません。もし緊急でない場合には、日本と同じように薬剤師のいる薬局で病状を伝えれば薬を処方してもらえます。
EDはオーストラリアの公立病院にある24時間体制の救急部門です。もし大ケガなどの重度な症状であれば、日本の119と同じように000に電話することで救急車を要請することができます。
受付のあと、看護師によって病気やケガの症状を診てもらえます。しかし、発熱や腹痛など軽度と判断されたときには、診断が後回しになるなど長時間の待機を余儀なくされることもあります。場合によっては、翌日に再度来院しなくてはいけないケースもあるようです。オーストラリアでの診療は、日本の医療機関より時間がかかり根気が必要かもしれません。
オーストラリア留学は予防接種だけで、安全を確保できたとはいえません。万が一に備えて、保険に加入しておくことをおすすめします。
海外渡航者向けの保険には、海外旅行保険と留学保険があります。それぞれの補償内容はほとんど同じになりますが、一部の付帯補償で違う点もあるのです。
留学保険では条件を満たせば、緊急で一時帰国する場合の費用や、学業費用などが補償されます。一方の海外旅行保険にはそれらの補償はない代わりに、居住施設の損害賠償責任が補償対象になっている場合があります。
海外旅行保険と留学保険の保険料は、どちらも3か月で5万円前後かかり補償をプラスするほど費用は高くなっていきます。すべての補償をつけてしまうと、かなり高額になるため自分にあったプランを立てることが大切です。
保険についてわからないことがあれば、留学エージェントに相談をしてみましょう。留学エージェントなら、渡航期間などにあわせて加入するべき保険を紹介してくれますし、手続きもおこなえるので活用することをおすすめします。
学生ビザ申請者にはOSHCへの加入が義務づけられているため、旅行保険や留学保険のみという選択はできません。OSHCは海外留学生用の医療保険で、病院での診療や入院にかかる医療費の自己負担を軽減することができます。
OSHCは保険会社が学校と提携して、手続きまで代行してくれることが多いようです。学校によっては、個人で申し込み手続きが必要な場合もあります。滞在期間や保険タイプで、かかる費用は変わります。留学生本人のみのカバーであればシングルタイプとなり、費用は1か月あたり55ドル(約4,000円)前後です。配偶者がいる場合には、ファミリータイプも選択できます。
適用限度内であれば救急車での搬送費用をはじめ、病気やケガなどの医療費が補償されます。しかし海外旅行保険では、医療費が全額負担される場合でも、OSHCは一部自己負担しなくてはならないこともあります。また、他人をケガさせてしまったときや死亡に対する補償もありません。
オーストラリアへの留学前にはOSHCの補償内容を確認して、国内の旅行保険や留学保険もあわせて加入しておいたほうがよいでしょう。OSHCの費用は安いですが最低限の補償しかないため、多くの留学生は日本の海外旅行保険とあわせて加入するケースがほとんどのようです。
オーストラリアでは、日本の健康保険は効果を発揮しません。歯科の検診や治療に関しては、全額自費となってしまいます。オーストラリアでは医療費が高く、歯を1本抜くだけでも600ドル(約5万円)前後もかかってしまうのです。虫歯や親知らずなどは、渡航前に必ず治しておくようにしましょう。
感染症が流行していないオーストラリアなら、予防接種していれば病気はしないだろう、と思うことは非常に危険です。
オーストラリアでは日本とは気候が異なり、北部では常に夏のような環境のため紫外線対策が必要ですし、地域によってはほぼ1年中花粉が飛散していることもあるのです。ここでは、滞在中健康に過ごすための注意点を覚えておきましょう。
オーストラリアで野菜や果物を生で食べることは、避けたほうがよいかもしれません。もしウィルスなどで汚染された水で洗われていれば、A型肝炎になってしまうおそれがあるからです。氷も同様なので、飲食店で食事をとるときはミネラルウォーターを選んだほうがよいでしょう。
自然が多い野外では、蚊などの虫に刺されないよう虫よけスプレーを携帯しておくのがおすすめです。蚊はウィルスを媒介することもあるため、刺されてしまえば日本脳炎になってしまうおそれもあります。ほかにも猛毒をもったアリやクモなどがいるので、見たことのない虫には近づかないようにするのが賢明といえます。
オーストラリアには、日本では見かけない毒ヘビなど、人に害を与える動物が生活圏の身近に生息していることもあります。場所によってはどう猛な野生のワニやサメが生息していることもあるのです。
もしそれらの動物に襲われた場合は、どんな小さな傷であっても、000に電話をしてEDなどの公立病院かGPへ駆けこみましょう。診療するときには、いつどこで何にかまれたかをしっかりと伝えて、適切な治療を受けるようにしましょう。
オーストラリア留学での予防接種は義務というわけではありません。しかし、さまざまな国の人たちが行き来することから、事前の予防接種をしておくことをおすすめします。予防接種をする場合は早めに計画を立てて、渡航の2か月前には済ましておきましょう。
もし現地で病院を受診する場合は、専門医より前にまずGPに診療してもらうことが必要です。オーストラリアは医療費が高く、ビザ申請者の加入義務であるOSHCで補償されないことも多くあります。
海外旅行保険か留学保険との併用加入がおすすめですが、付帯補償に違いもあるため留学エージェントに相談をして自分にあった最適なプランを立ててみましょう。
留学保険についてや留学保険を選ぶポイントなどについてはこちらの記事でまとめていますので、留学保険の加入にお悩みの方はぜひこちらも合わせてご覧ください。
滞在中を健康で過ごすためにも、ケガや病気に注意しながらオーストラリアの留学を楽しんでください。
オーストラリア留学は、海外渡航経験の少ない方にも自信を持っておすすめできます。 気さくでフレンドリーな人柄が魅力のオーストラリアは、多文化・多民族国家であるゆえ、外から来た人も馴染みやすく、何度も訪れたくなる心地よさがあります。 他の国に比べて留学生に対する制度が充実していて、国を挙げて手厚くサポートする体制が出来上がっているため、不安が多い海外生活も安心して送ることができるでしょう。 期間や渡航スタイルの選択肢が広く、短期留学やワーキングホリデーなど自分に合った形を選ぶことができるのもオーストラリア留学の大きなメリットです。