オーストラリアに入国する場合には、滞在の長さや目的にかかわらず、なんらかのビザが必要になります。たとえオーストラリアの永住権所持者であっても、いったんオーストラリアを出国すれば、再入国の際には再入国用のビザが必要になるのです。
また、オーストラリアのビザにはたくさんの種類があります。しかも、ビザに関する法改正が頻繁に行われているので、最新の情報をチェックすることも必要です。そのため、オーストラリアに行きたいが、自分にはどのビザが必要になるのかわからないという方も多いでしょう。
オーストラリアのビザの種類とその申請方法について紹介します。
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オーストラリアのビザにはたくさんの種類がありますが、ビザごとにサブクラスという数字が割り当てられています。オーストラリアの学生ビザは、サブクラス500です。学生ビザは、オーストラリアの教育機関で3カ月以上の修学を予定している人が対象になります。
学生ビザを取得するための要件は、6歳以上であること、オーストラリアの教育機関から入学許可を得ていること、健康に問題がなくオーストラリアの留学生健康保険に加入すること、です。18歳未満の場合には資力の証明も必要になります。
この要件を満たす場合、GTE(Genuine Temporary Entrant)審査(英文で、なぜ自分のビザ申請が真正なのかを説明すること)、英語力、経済力、健康診断の結果、犯罪歴などからビザの発給の可否が審査されます。
学生ビザが発給された場合、一定の条件の下で、申請者の扶養家族も同行が許されます。この場合、扶養家族も、3カ月まで修学が可能です。
また、申請者とその家族は、2週間で40時間まで働くことができます。2週間で40時間というのは、2週間ごとに期間を区切るのではなく、連続した2週間で40時間を超えないという意味です。ビザの期間は最長で5年になります。
なお、2016年7月1日から、学生ビザはサブクラス500に統一されましたが、以前は、大学、専門学校、語学学校などの教育機関ごとに異なる7種類のビザが存在していました。
また、18歳未満の学生ビザ申請者の保護者または親族が、学生ビザ申請者の保護者としてオーストラリアに滞在するためには、サブクラス590の学生ガーディアンビザが必要です。
オーストラリアの就労ビザは、大きく2種類に分かれます。1つはTSS(Temporary Skill Shortage)という名前のサブクラス482のビザです。もう1つはSkilled Regional Provisionalという名前のサブクラス489のビザです。
サブクラス489のビザは、特定されたエリアにのみ在住可能な暫定移住ビザであり、州政府や当該エリアに居住する親戚からの推薦を受ける必要があります。
サブクラス489のビザは永住権取得のための足がかりとして使えるものですが、日本人にとっては利用することが少ないので、ここではTSSのみを説明します。
TSSは、さらにShort-Term StreamとMedium-Term Streamに分かれます。両者の一番の違いは、名前の通りに、有効期限が異なることです。Short-Term Streamは2年間、Medium-Term Streamは4年間で、Short-Term Streamは1回しか更新することができません。
どちらのビザも、目的は、オーストラリア人の労働力を確保できない職種に外国人労働者を活用するというものです。そのため、ビザの対象となる職種のリストが定められています。さらに、職種ごとに、受け入れ先となるオーストラリア企業の企業規模などの付帯条件が設定されており、これも満たす必要があります。
ビザ申請には、その職種で2年以上の実務経験があることや、定められた最低賃金以上で働くことが必要です。リストの職種や申請者に求められる能力は、Short-Term StreamよりもMedium-Term Streamの方が厳しくなっています。また、受け入れ先となるオーストラリア企業にも、オーストラリア人の労働者を育てるための研修ファンドに対して出資することが求められます。
就労期間が3カ月以内に終了できる短期的で非継続的な、高度な技術を要する業務である場合には、テンポラリーワーク(短期特定活動)ビザ (サブクラス400)が必要です。このビザを申請するには、就労がオーストラリアのビジネス支援になることと、オーストラリア労働市場では補充できない専門技術・知識または経験が求められます。
この他に、ワーキングホリデー・ビザ(サブクラス417)によっても就労が可能になります。ワーキングホリデーとは、2つの国の間の取り決めに従って、相手の国で一定期間の休暇を過ごし、その間の滞在費用を得るために就労することもできるという制度です。
互いの文化や生活様式を理解するための制度であり、日本のワーキングホリデーは、1980年に、オーストラリアとの間で開始されました。
ワーキングホリデー・ビザの発給の条件は、18歳以上30歳であること、人物審査および健康診断の条件を満たすこと、滞在時中の生活資金(およそ5000豪ドル)を所持していること、です。扶養家族が同行しないこと、オーストラリアの価値観を尊重して法律を遵守すること、も求められます。生涯に2回まで発給される可能性があり、2回目の発給には、地方都市で農業・畜産業などの特定活動に3カ月以上従事したことがあること、も必要です。
ワーキングホリデー・ビザでは、最長12カ月の間に何度でも自由にオーストラリアを出入りすることができます。そして、1つの雇用主につき通常は最長6カ月間、内務省の許可を得れば12カ月間、就労することが可能です。なお、ワーキングホリデー・ビザでは、最長4カ月の間、修学することも可能になっています。
観光や商用公用活動での一時訪問には、原則として、サブクラス600の訪問ビザが必要です。観光とは娯楽、親族・友人訪問を含みます。また、商用公用活動とは学会参加、契約交渉、市場調査等を含みます。
ただし、訪問ビザでは、就労や製品・サービスの販売はできません。このビザでは、渡航目的に応じて4つのストリームのいずれかを選択することになり、目的と異なるストリームで申請した場合には申請は不許可になります。
訪問期間が3カ月までの場合、ETA(Electronic Travel Authority)というサブクラス601のビザが利用できます。ETAは短期観光と短期商用・公用活動ができる電子渡航許可タイプのビザです。ETAの有効期限は、ETA許可日から12カ月間、またはパスポートの有効期限満了日までのいずれか早い日までとなります。1回の訪問につき最長3カ月まで滞在可能で、有効期限内であれば複数回の渡航が可能です。
オーストラリアで飛行機や船を乗り継ぐ場合、通常は、日本のパスポートがあれば、ビザ無しでの乗り継ぎが可能です。しかし、乗り継ぎに時間がかかり、8時間以上オーストラリアに滞在することになる場合には、トランジット・ビザ(サブクラス771)が必要になります。
このビザによって最大72時間までオーストラリアに滞在することが可能になりますが、乗り継ぎ以外のことはできず、観光もできません。
オーストラリアに家族やパートナーがいる場合、その家族やパートナーがスポンサーとなることで、長期間オーストラリアに滞在することが可能になります。家族やパートナーがスポンサーになるための条件は、オーストラリアの国籍または永住権を持っているか、資格のあるニュージーランド国籍者であることです。
オーストラリアにいるパートナーと結婚または事実婚をしている場合には、サブクラス309のパートナー・ビザの発給を受けることができます。サブクラス309のビザは一時的なもので、有効期限は、2年後にサブクラス100のパートナー・ビザの発給についての決定がなされるまでです。
2年後の再審査を通ると、サブクラス100のパートナー・ビザによって、永住が可能になります。
また、パートナーと婚約をしている場合には、サブクラス300の婚約者ビザによって9カ月の滞在が可能です。
オーストラリアに親がいる場合にはサブクラス101の子供ビザの発給を受けることができます。
オーストラリアに子供がいる場合にはサブクラス103の親ビザの発給を受けることができるのですが、取得できるまでに長い時間がかかるので、サブクラス600の訪問ビザが利用されています。
その他のビザとしては、永住権取得者がオーストラリアの外に出た後再入国するための再入国ビザ(サブクラス155)などがあります。
多くの国では、観光目的での短期間の滞在の場合、ビザがなくても入国が可能です。例えば、オーストラリアと同じオセアニアにあるニュージーランドでは、観光目的での3カ月以下の滞在ではビザは必要ありません。
しかし、オーストラリアでは、同じ目的、同じ滞在期間でも、ビザが必要です。
また、オーストラリアのビザは、全て3桁のサブクラスで表示されています。これは、3桁の数字を割り当てないと管理できなくなるほどたくさんの種類のビザがあるということです。2016年に学生ビザ7種類が統合されたように、数を減らしてシンプルにしていく方向性にありますが、他の国と比較すると未だビザの種類が多いといえます。
入国の際に必ずなんらかのビザが必要になることと、ビザの種類が多いことがオーストラリアの特徴といえるでしょう。
これらの特徴から、オーストラリアに入国しようとする際には、渡航目的や期間に応じた適切なビザを選択することが求められます。しかも、オーストラリアでは、2017年4月にオーストラリア・ファーストの政策が打ち出されて、入国審査が厳しくなっています。ビザを規定する移民法の改正も頻繁になされているので、最新の法律が要求しているビザを申請することが必要です。
ビザの種類を間違えて申請してしまうと、申請が却下されてしまうことがあるので、ビザ申請の前には、それが正しいビザであるのかしっかりと確認しましょう。
ビザの申請が却下されてしまった場合、不備のある書類を整えて再申請をするか、提出した書類の正当性を裁判所に対してアピールすることになります。いずれの方法を取る場合でも、しっかりとビザの要件を確認して手続を行うことが必要です。
オーストラリアにはたくさんの種類のビザがありますが、その多くがインターネット経由で申請することが可能です。
インターネット経由で申請して発給されるビザはeVisaと呼ばれており、eVisaを利用する場合、入管でパスポートを見せても印鑑が押されずに、全てオンラインで確認されることになります。
eVisaを申請するには、パスポートとクレジットカードが必要で、連絡方法としてEメールアドレスを指定することも可能です。手続はオーストラリア内務省のwebサイト上で、ImmiAccountというアカウントを作成して行います。eVisa申請にかかわるwebサイト上の表記は全て英語になっています。
また、一時訪問のためのETA(Electronic Travel Authority、サブクラス601)を申請する際には、ETASというオーストラリア移民局のシステムを利用することができます。こちらは日本語にも対応しています。なお、ETAは、その名の通り電子化されていて、システムを利用しないと取得することができません。
しかし、航空会社や旅行代理店が代行申請することが可能です。
またこちらの記事で、オーストラリアのビザや申請手順などについてまとめていますので、オーストラリア留学にご興味のある方はぜひこちらも合わせてご覧ください。
オーストラリアではビザに関する法律が頻繁に改正されて、ビザの種類や取得方法が変わります。そのため、常に最新の情報を入手することが必要です。
例えば、就業目的での渡航に関しては、2009年9月から、就労ビザ(サブクラス457)が導入されてきました。しかし、2017年4月18日に、オーストラリア連邦政府がオーストラリア・ファーストの政策を打ち出し、2018年3月からは就労ビザを廃止して、TSSビザに切り替えると発表しました。TSSビザは、労働力としてオーストラリア人を確保できない職種で外国人労働者を確保するためのビザです。
2017年4月18日の法改正では、就労ビザの対象となる職種の数が651から435に削減された上に、職業ごとに、ビザを取得するための付帯条件が設定されました。ところが、4月18日改正に対する反対が多かったため、同年7月1日には就労ビザの取得条件が緩和されています。また、同年12月31日には、就労ビザ申請者の年収を把握しやすいように、ビザを管轄する移民省と国税局の連携が強化されました。
このように、オーストラリアでは、どの時期にビザを申請するかによって要件や手続が変わっていくので注意が必要です。そのため、ビザを申請する際には、最新の情報を入手する必要があります。
オーストラリア留学は、海外渡航経験の少ない方にも自信を持っておすすめできます。 気さくでフレンドリーな人柄が魅力のオーストラリアは、多文化・多民族国家であるゆえ、外から来た人も馴染みやすく、何度も訪れたくなる心地よさがあります。 他の国に比べて留学生に対する制度が充実していて、国を挙げて手厚くサポートする体制が出来上がっているため、不安が多い海外生活も安心して送ることができるでしょう。 期間や渡航スタイルの選択肢が広く、短期留学やワーキングホリデーなど自分に合った形を選ぶことができるのもオーストラリア留学の大きなメリットです。