海外を訪れたときいくつもの不安な事柄はあると思いますが、宗教に関することも普段なじみがなく戸惑うことはありませんか?たとえば、多民族国家であるマレーシアの宗教は国教がイスラム教とされていますが、祝日は仏教やキリスト教のイベントが混じり複雑です。また、イスラム教のルールをよく知らない人も多いと思います。
今回はマレーシアの宗教事情とイスラム教のルールについてご紹介します。知ることでトラブルを回避し、互いのあり方を尊重できるはずです。
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マレーシアの特徴のひとつは多民族国家という点です。民族はマレー系が最も多く、中国系、インド系のほか少数民族が集まっています。それぞれの民族が独自の文化や習慣を持ち、それがマレーシアの宗教にも反映されています。
マレーシアではイスラム教、仏教、キリスト教、ヒンドゥー教、儒教・道教、その他にシーク教徒、アニミズム(土着宗教)が信仰されています。国教はイスラム教で、主にマレー系の人々が信徒です。中国系は仏教に多く、インド系はヒンドゥー教によく見られます。また、イギリスの植民地だった過去からキリスト教徒もいます。
マレーシアでは1つの街に多数の寺院が混在していることも特徴です。首都クアラルンプールとその郊外ではイスラム教のモスク、ヒンドゥー教の寺院や聖地、仏教寺院、キリスト教の教会が建ち並んでいます。また、街中を歩けば多くの女性はヒジャブ(スカーフ)を頭部に巻き、スーパーではハラル認証製品を見かけます。このようにマレーシアは多宗教国家でもあるのです。
イスラム教が国教となった背景にはマレー半島で興った王国がかかわっています。14世紀末頃に成立したマラッカ王国は東西貿易の拠点でした。海上貿易で栄え、多くの人が訪れたとされています。商人であるアラブやインドのイスラム教徒の影響から、マラッカ王国はイスラム教国になりました。
その後、ポルトガルやイギリスの侵略を受けマラッカにキリスト教が伝来します。さらに植民地には働き手として中国系やインド系の移民が移り住むようになります。移民と共に仏教やヒンドゥー教の教えも流入し、マレーシアには宗教が数多く存在するようになりました。
多宗教国家であり、イスラム教国家でもあるマレーシアは宗教の行事も宗教ごとに行われています。その数は多いですが、どの宗教の行事も国民の祝祭日として扱われています。
たとえば、各宗教の開祖の生誕日もすべて休日です。ウェサックデーは5月頃(中国暦の4月15日)に行われる仏教の釈迦生誕祭です。日本では花祭りとよばれています。ムハマンド生誕祭は11月頃(イスラム歴の3月12日)に行われます。日本人も知っている12月25日のクリスマスは、イスラム教徒が多くてもショッピングモールでクリスマスツリーが飾られるなどほかの生誕日同様に受け入れられているようです。
各宗教、暦ごとの正月も休日扱いです。太陽暦の1月1日のニューイヤーズデーや、イスラムの正月であるアワルムハラムは9月頃(イスラム歴の1月1日)に祝います。旧正月である2月(中国暦1月1日)のチャイニーズニューイヤーは中国系の人たちにとって一大イベントです。
日本人にとってイスラム教はあまり身近なものではありません。しかし、マレーシアでは各宗教のルールは尊重しあうものであり、観光客である日本人もそれは同様です。
マレーシアには多くのモスクが観光地として有名で、中を見学することができます。その際、女性は肌を露出しないことが大切です。イスラム教の教えでは、女性は人前で肌や髪の毛を見せないようにすることが求められます。モスクの入口では観光用のガウンやローブ、スカーフを借りることができるので活用しましょう。
仕草やコミュニケーションにも注意が必要です。イスラム教では左手は不浄とされ、食事や物を渡すときは左手を使わないよう注意しなければいけません。また頭は神聖な部分なので、相手が子どもであっても日本と同じようになでるのは失礼な行為です。ほかにも初対面の女性に男性から握手は求めないようにしましょう。相手側から握手を求められたら応じる程度で大丈夫です。また物や人を指すときは人差し指を使用してはいけません。代わりに親指を使うようにすると失礼にはあたらないようです。
イスラム教のルールでよく知られているのが酒や豚をタブーとしていることかもしれません。イスラム教において不浄とされる豚や、イスラム教の教えにのっとった方法で加工されなかった肉を食べることは禁じられています。アルコール飲料も多くの人が避けますが、アルコールを含むウェットティッシュなどの製品への対応は個人差があるといわれています。
マレーシアでは宗教に応じた細かい対応が所々で見ることができます。お店で食品を買うときも、ハラルやノンハラルでレジや売り場がわかれています。ハラルとは「許されている」を意味し、ノンハラルもしくはハラームは「禁じられている」を意味します。モノや行動が許されているか否かを示し、ハラル認証された食品をイスラム教の人たちは購入します。
マレーシアでは宗教に対し寛容であり、互いに尊重しあっています。国教が定められながらも、それ以外の宗教も祝祭日としてそれぞれの宗教に関する祝いごとを共有します。この背景にはマラッカ王国の成立から植民地として支配され、独立するまでのマレーシアの歴史をうかがうことができます。
私たち日本人もあまりなじみのないイスラム教に対し、ルールなど不安な点もあるかもしれません。しかし、このように予め相手のことを知ることでトラブルを未然に防ぎ友好に接することにつながると考えられます。ぜひ、マレーシアに行くときの参考にしてください。
Q&AまとめQ&A
ロングステイ人気No.1のマレーシア。主に3つの民族が混在する多民族国家ですが、 互いに尊重する国民性、東南アジアの中でも経済的にも豊かであることから治安も穏やかです。 多民族文化らしく、外食でも様々な国の料理をリーズナブルに味わうことができるのも魅力の一つ。 東南アジアの中心に位置するため、多くの国からのアクセスが良好で、様々な国から留学生や移民が集まっています。 そのような土地柄のため、共通言語としての英語の能力はトップレベルで語学留学にも最適な環境。 リーズナブルかつ住みやすい環境で、国際的な感覚を養うことができます。