カナダの大学への留学について注目が集まっています。諸外国への大学留学と比べて、教育や研究のための環境が優れていて、卒業後の進路についてもさまざまな優遇措置があるためです。そのような豊かな環境のなかで学生生活を送れることを考えても、比較的費用負担が低めで、コストパフォーマンスが良い点も人気の秘密といえます。
ここでは、カナダの大学へ留学に行く前に知っておくべきことについて、主な大学の紹介や入学に必要な条件について考察します。
さらに、大学の講義での語学力の必要性、費用や就職を考えた学校選びのヒントまで詳しく説明していきます。
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日本ではそれほど知名度は高くないのですが、カナダの大学は世界的評価が高いことが知られています。Times Higher Education 2018のランキングで、上位100校に4校が入っています。上位校から概要を見てみましょう。
22位のトロント大学 University of Toronto は1827年創立のカナダ最大の大学です。過去にノーベル賞受賞者を10人輩出し、学問的伝統と最高の教育環境を誇っています。研究図書館の蔵書は約1800万冊を数え、高等教育・研究機関としても世界屈指の大学といえます。
34位のブリティッシュ・コロンビア大学 University of British Columbiaは、バンクーバー近郊にある1915年創立の総合大学です。ノーベル化学賞を受賞した研究者も在籍しており、盛んな先端技術研究で知られています。留学生も多く、国際性豊かな教育機関としても人気のある大学です。広大なキャンパス内には、人類学博物館があり、観光スポットにもなっています。
42位のマギル大学 McGill Universityは、モントリオールにある大学で1821年の創立です。フランス語圏にありますが、英国人実業家ジェームズ・マギルの遺産で設立された英語系大学です。カナダでも最古参の大学のひとつで、特に医学部は世界的な名門として知られています。研究活動での世界的評価も高く、過去に12人のノーベル賞受賞者を輩出しています。
78位のマックマスター大学 McMaster Universityは、医学系及び工学系に強いことで有名です。キャンパス内には実験用の原子炉もあり、過去3名のノーベル賞受賞者がいます。ちなみに日本の大学では、東京大学(46位)、京都大学(74位)が100位以内にランクインしています。統計データの集計方法によって順位は異なるため、あくまで参考数値に過ぎませんが、この調査によればカナダには東京大学より評価の高い大学が3校あることになります。
このように国際的な評価が高いカナダの大学ですが、98校のほとんどは州立大学です。日本では公立大学に相当します。教育の質を確保するために、同じイギリス連邦に所属するニュージーランド同様、州政府によって教育品質を保証する制度があり、大学運営には厳しいチェックが入ります。そのため、大学間の格差がほとんどなく、高い教育水準が維持されています。
日本の教育制度で学んできた学生がカナダの大学に入学するためには、主に3つのルートが考えられます。
1つ目は、高等学校を卒業している人の場合です。これには、大検や各種学校卒業者も含みます。4年制大学への入学資格はありますが、直接入学するには、かなり高いレベルの学力と語学力が要求されます。不安があるのなら、まずジュニア・コミュニティーカレッジと呼ばれる2年制大学へ進学し、準学士号を取得します。それから、改めて4年制大学を目指すと良いでしょう。
2つ目は、高等学校を卒業していない場合です。そのままでは4年制大学への入学はできません。まず、2年制大学付属の高等学校卒業資格コースに入学してください。このコースを終了したあとで、4年制大学を目指します。学力や語学に不安があるときは、2年制のジュニア・コミュニティーカレッジや、大学附属の英語集中コースを経たほうがよいかもしれません。
3つ目は、短大や大学に在学中または卒業している場合です。4年制大学への入学資格はあるので、学力と語学に自信があれば直接入学も可能です。自信がなければ英語集中コースを事前に受講します。学校によっては正規の授業と並行して受講が許可されるので、語学力をフォローアップしながら学べます。大学を卒業しているのであれば、一般的には大学院への入学資格もあるのですが、もし学部や専攻が異なる場合は、改めて大学からやりなおしたほうがよいでしょう。同じ分野であれば、取得済み単位を移行して、上級学年に編入できる場合もあります。このあたりの詳細は州ごとに制度がことなります。入学を希望する大学の履修条件について事前にしっかり確認してください。
なお、大学入学に必要な能力についてですが、具体的には英語力はTOEFL iBT79~80(PBT550)以上、IELTS で 6.0〜6.5が要求されます。大学によっては英語評価試験が課されることもあります。学力については履修科目平均Bまたは良レベル以上が必要です。専攻するコースによっては、小論文や課題の提出が求められる可能性もあります。これらの基準は最低限ですので、研究分野によってはこのレベルでは授業についていけない可能性もあります。
留学を考えはじめたら、留学先が決まる前に、英語のブラッシュアップを始めることをおすすめします。
カナダの大学留学で気をつけなければならないのは、大学の所在地や学部によって学費の差が大きいということです。
まず、州立大学なので州ごとに金額が異なります。カナダ全体の平均は150〜200万円程度ですが、これもあくまで目安であり、自分の希望する学校と学部についてきちんと情報を収集しておく必要があります。2016-2017年の例を挙げると、最も高額なのがトロントなどがあるオンタリオ州管轄の州立大学で、年間平均2万9716ドル(約246万円)となっています。
逆に、最も安いのはニューファンドランド・ラブラドール州の年間平均9360ドル(約77万円)です。両者の間には約3倍の差があり、日本円にすると約170万円変わってきます。
これは年額なので卒業を考えると4倍の差になるわけです。ただ、アメリカなどの諸外国の大学と比較すると、カナダの大学の学費には割安感があります。学費を含めた留学費用全体で具体的に比較してみましょう。アメリカもカナダも州立大学の場合、留学生は州外出身者となり学費が高めに設定されています。
例えば、アメリカの州立大学の平均値では州内出身者が9650ドルとすると、州外出身者は2万4930ドルになります。留学生などの州外出身者の留学費用全体は約3万5000ドルとなり、日本円に換算すると380万円ほどかかるのです。高いところは400万円程度必要ですが、場所によっては240万円程度で済むカナダの大学と比べると差が目立ちます。
同じ内容の教育を受けていて授業料が異なるのは制度上仕方がないのですが、留学生であっても、カナダ人の学費が適用されるケースがあります。カナダの永住権を取ればよいのです。カナダの大学を卒業すると永住権がもらえますが、入学前に取得してしまうのです。どうしても学費を安くしたい場合は、調べてみると良いでしょう。カナダの国籍を取得するわけではなく、あくまで永住権なので、日本国籍はそのままで申請が可能となっています。永住権を持っていれば、カナダ人とほぼ同様の社会的なサービスを受けることができます。医療費は無料になり、大学等の学費は居住する州内出身者レートが適用されるのです。
永住権の申請は、カナダ移民局を通して「移民申請」を行ってください。アメリカと違って、カナダの永住権は比較的取得しやすいといわれています。それでも、移民受け入れ条件は流動的で申請システムの変更が頻繁に行われています。移民コンサルタントに依頼して申請するほうが確実でしょう。なお、カナダ永住権取得後は5年間の内、最低2年間(730日)はカナダに居住していないと権利が消失することに注意してください。
カナダの大学へ留学を希望する場合、入学のハードルは低いのですが、卒業のハードルは高いことを覚悟しておきましょう。まず入学ですが、英語力の証明と最終学歴の卒業、成績証明書、面接などによって選考されます。日本の大学入学試験にあたるようなものはないので、試験対策としての受験勉強の必要はなく、その意味ではそれほど難しくはないといえるでしょう。もし、高等学校の成績が低くて希望する大学に入学できなかった場合にはどうすればよいでしょうか。日本と違い、カナダでは再チャレンジが可能になっていて、2年制のジュニア・カレッジから始めればよいのです。そこで優秀な成績を修めれば、有名大学への編入も可能になります。
欧米系の大学では一般的にいえますが、入学後の成績評価に関しては、日本の大学よりも基準が厳しいと考えてください。日本の大学の講義と比べて多くの冊数の課題図書を読む必要があり、授業中に質問するなどの積極的な参加態度も評価のポイントになります。このとき役に立つ重要なスキルが英語力です。英語による講義を聞いて理解するだけではなく、自ら発言して、場合によっては討論ができる英語力が要求されます。つまり、発信型の英会話力が必要なのです。
留学前に相当な時間を費やして英語力を高めておかないと、授業についていくハードルを実感することになるでしょう。もし、語学力が不安な場合は、迷わず大学附属の英語プログラムを受講しましょう。英語の授業に参加するときに必要となる、思考力・発言力・比較分析力等をトレーニングするプログラムが提供されています。
日本の大学と比べると、カナダの大学では他大学への転科や転校がしやすいことがその特徴のひとつとなっています。また、必須科目さえこなせば、自分の興味に従って学びたいカリキュラムを選択できます。このような選択の自由度もカナダの大学教育の特徴のひとつです。
このような仕組みは、将来の就職に向け必要な技能を身につけられる点では優れた制度ですが、そのぶんの学習負担は増加する点に注意しましょう。授業を増やせば、そのぶんの課題も付いてきます。就職を考えると優秀な成績で卒業することも重要な目標です。まず、自分の興味と作業負担のバランスを考えましょう。
その上で、無理のない履修計画を立て、卒業を目指してください。
カナダの大学には優秀な学生が集まるといわれています。
その理由のひとつは、大学卒業後に一定期間カナダで働くことが公式に許可されているからです。カナダの大学を卒業すると留学生は最長3年の労働ビザが取得可能になります。さらに、卒業するとカナダの永住権も取得できるのです。大学によっては、地域産業と共同研究を行っているところもあり、自分の研究分野と一致していれば、就職活動に有利になる可能性があるのです。カナダでは州ごとに競争力のある産業に特徴があります。就職まで見据えた留学を考えている場合は、最初から自分の興味のある分野の産業が強い地域の大学を選択するとよいでしょう。
具体的な地域と産業の関係を挙げると、ケベック州やカナダ最大の都市であるトロントがあるオンタリオ州では、情報技術・通信・マルチメディアなどの工学系産業が盛んです。なかでも、カナダの文化・芸術の中心地であるケベック州では、アート関連の仕事も見つけやすくなっています。
ちなみに、ケベック州の最大都市モントリオールは、フランスのパリやコンゴのキンシャサに次ぐ世界で3番目の人口を抱えるフランス語圏となっています。ブリティッシュ・コロンビア州では、バイオ・次世代エネルギーなどの環境工学系や、マルチメディア関連産業が盛んです。
オイルサンドや鉱物資源の産出で知られる州都エドモントンを抱えるアルバータ州は、天然資源のマネジメントが主要産業のひとつとなっています。
一方、カナダ最北端にあり、世界屈指の漁場で知られるニューファンドランド・ラブラドール州は海洋産業のメッカです。農業関連産業への就職を希望するのであれば、サスカチュワン州がおすすめです。
これまで見てきたように、カナダの大学は世界でも有数の研究・教育環境を持ち、卒業後の就職に関しても大きな可能性があるといえます。
諸外国の大学と比較しても、就労ビザや永住権など卒業後の求職環境の充実は特筆すべき点でしょう。留学費用についても、とくにアメリカなどと比べると、工夫次第では非常にリーズナブルな学費と滞在費で済むところも魅力的です。
カナダへの留学を検討しているのであれば、卒業後に現地で働くことも視野に入れた、長期計画を立ててみることをおすすめします。
世界2番目の国土を誇る広大な大地と雄大な自然が特徴のカナダは、都市ごとに雰囲気や気候が異なり、 冬にウィンタースポーツが楽しめる都市があるなど四季折々の魅力が溢れています。 多民族国家で移民が多く協調性を大切にする温かい国民性から、異文化の様々なバックグラウンドを持つ人々が仲良く暮らす国としても有名。 留学生が受け入れられやすい環境や雰囲気があり、訛りの少ないニュートラルな英語を話すため、 英語初心者も安心して留学することができます。