海外の大学院に留学しようと考えている方に人気の国は、アメリカやイギリスでしょう。しかし、名門大学・大学院が多いアメリカやイギリスに負けず劣らずレベルが高いのが、カナダです。さらにカナダの大学院は、学費が安いことも大きな魅力です。
この記事では、カナダの大学院留学に興味を持っていただいた方のために、入学までのステップや準備、留学でかかる費用などを解説していきます。
CONTENTS
グローバル社会の中で専門性を高めたいと考える学生にとって、海外の大学院進学は魅力的な選択肢です。
中でもカナダは、 教育の質の高さと国際的な評価、そして比較的手頃な学費や永住権につながる制度の存在から、多くの留学生に選ばれています。
ここでは、カナダの大学院の特徴を紹介しつつ、日本の大学院との違いを明確にし、カナダ留学のメリットを詳しく解説していきます。
カナダの大学院が高く評価されている最大の理由は、世界的にも認められた教育水準にあります。
トロント大学、ブリティッシュコロンビア大学、マギル大学などは、タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)やQS世界大学ランキングにおいて常に上位にランクインしており、国際的な研究や教育の拠点としての地位を確立しています。
また、大学院では最先端の研究施設が整っており、多くの教授が現役の研究者や業界の専門家として活躍している点も魅力です。
こうした環境の中で、学生は講義だけでなくプロジェクトやディスカッションを通じて実践的な知識とスキルを身につけていきます。
カナダの大学院制度は、日本とは大きく異なるいくつかの特徴を持っています。
まず、カナダには約100校ほどの大学しか存在しませんが、それぞれの質は非常に高く、州政府による厳格な認可制度によって教育水準が保たれています。
また、ほとんどの大学が公立であるため、学費はアメリカやイギリスと比べて比較的安く、留学生でも年間10,000〜20,000カナダドル程度で通うことが可能です。
さらに、ケベック州など一部の地域ではフランス語で授業が行われることもあり、英語・フランス語の二言語環境で学べる点も、カナダならではの魅力です。
加えて、教育制度や大学の特色は州ごとに異なり、研究に特化した州や産業との連携が強い州など、多様な選択肢が用意されています。
カナダの修士課程は一般的に1〜2年で修了できる構成になっており、主に「コースワーク型(course-based)」と「リサーチ型(thesis-based)」の2種類に分かれます。コースワーク型のプログラムでは、授業(講義)を中心にカリキュラムが組まれており、試験やレポートで成績を評価されます。
ビジネス、教育、公共政策などの分野で多く見られ、実践的なスキル習得を重視した内容です。
一方で、リサーチ型プログラムは独自の研究テーマに基づく論文執筆が必須であり、研究計画の策定、指導教員との個別指導、口頭試問などを経て学位が授与されます。こちらは自然科学や工学、医学、社会科学分野などで多く採用されています。
コースワーク型の修士課程はキャリアアップや専門職への就職を目指す学生に適しており、就学期間が短く費用も比較的抑えられるという利点があります。
一方、リサーチ型は学術分野や研究職への道を志す人に向いており、将来的に博士課程へ進む際の準備段階として位置づけられることもあります。
ただし、入学には研究計画の提出や指導教員の受け入れ承諾が必要なことも多く、事前の準備が欠かせません。
カナダの博士課程は、高度な専門知識と研究能力を身につけることを目的とした長期的な学術プログラムです。
通常、修了までに4〜6年を要し、入学段階から高度な学術的素養と研究計画の提示が求められます。
修士号を取得してからの進学が一般的ですが、優秀な成績を修めた学士号保持者が直接博士課程に進む「直進型(Direct Entry)」も存在します。
博士課程は大きく分けて、授業科目の履修、Qualifying Exam(資格試験)、Research Proposal(研究計画)の提出と承認、そして論文執筆・口頭試問(ディフェンス)という段階を経て進行します。
入学後1〜2年は専攻分野の専門知識を深めるための授業を受ける期間で、同時に自らの研究テーマを練り上げていきます。
この期間の終了時に受けるQualifying Examは、その後の研究に必要な学術的能力があるかどうかを測る重要な関門です。
筆記試験や口頭試問の形式で行われ、合格すれば正式に博士候補(PhD Candidate)として認定されます。
その後、指導教員の助言を受けながらResearch Proposal(研究計画書)を作成し、学内の審査委員会の承認を得ることで、本格的な研究段階へと進みます。
博士論文の執筆には通常2〜4年を要し、最終的に完成した論文は口頭試問(ディフェンス)で学内外の審査員によって厳密に評価されます。
このディフェンスを経て合格すれば、博士号(PhD)が正式に授与されます。
カナダの大学院では、特にリサーチ型のプログラムにおいて、研究体制の充実が際立っています。
たとえば、トロント大学の医療・生命科学研究、UBC(ブリティッシュコロンビア大学)の環境科学・持続可能性分野、マギル大学の人工知能や神経科学の研究などは国際的にも高く評価されています。
これらの大学では最新鋭の研究設備や実験施設、図書館・データベースの充実が整っており、学生が研究に集中できる環境が整えられています。
また、多くの大学では教授陣と学生が共同で国際的な研究プロジェクトに参加する機会があり、実践的な研究スキルやプレゼンテーション能力を高めるチャンスが豊富です。研究資金も比較的潤沢で、政府や民間からの助成金が利用できる場合も多く、博士課程の学生にはRA(Research Assistant)として雇用されることで報酬を得られる場合もあります。
カナダの大学院への留学を検討する上で、最も気になるのが「費用面」です。カナダはアメリカやイギリスに比べて学費が比較的安く、質の高い教育を手頃な価格で受けられることで知られていますが、それでも数百万円規模の出費を伴う一大プロジェクトです。
ここでは、学費や生活費の目安、奨学金制度など、資金計画に欠かせない要素をわかりやすく解説していきます。
アメリカやイギリスに比べて、カナダの大学院留学にかかる費用が安い理由には、学費と物価の安さにあります。
では相場として、どれくらいの留学費用が必要となるのでしょうか。
カナダの公立大学院で1年間留学する場合の費用として、学費や生活費を含めると100万円から250万円程度が相場といわれています。
私立の有名な大学院では130万円から300万円程度となるようで、公立の大学院とそんなに大きな差はないようです。この相場金額は、アメリカの大学院留学に比べて3分の2から半分程度となります。
そして、そのほかにかかる留学費用としては、渡航費が7万円から17万円程度、留学中の健康保険が年間10万円から15万円程度、教材費が年間10万円程度となります。また、留学中の交際費や娯楽費は個人によって差があり、それぞれの生活スタイルによって違ってきます。
月々の生活費は、都市によって大きく異なります。たとえば、生活コストが高いとされるトロントやバンクーバーでは、月額1,500〜2,500カナダドルが目安となる一方、モントリオールやハリファックス、地方都市では1,000〜1,800カナダドル程度に抑えることが可能です。
住居の選択肢によっても費用は変動します。学生寮は1人部屋で月700〜1,200ドル、ホームステイは食事込みで900〜1,100ドル、シェアハウスを選べば月500〜800ドル程度で住むことも可能です。
食費は自炊を中心にすれば月300〜500ドル程度に抑えることができ、交通費も学生割引が適用される定期券を利用すれば月70〜100ドル前後です。
節約方法としては、学生用の割引制度の活用や、シェアハウスでの共同生活、自炊中心の食生活が効果的です。
また、カナダでは 大学院生でもオフキャンパスで週20時間までのアルバイトが許可されており、収入源の一つとして活用することが可能です。
学期中は週20時間、休暇中はフルタイムでの勤務が認められており、最低賃金で働いた場合でも月800〜1,000カナダドルほどの収入を得ることができます。
費用面での不安を軽減してくれるのが、奨学金や学内の経済的支援制度です。
カナダの大学院では、主に3つの種類の支援が利用できます。
第一に、大学独自の奨学金やフェローシップがあり、成績優秀者や研究計画が優れている学生に対して支給されます。支給額は年間5,000〜15,000カナダドル程度が一般的です。
第二に、Teaching Assistant(TA)やResearch Assistant(RA)として働くことにより報酬を得られる制度があります。
TAは学部生の授業補助や採点を行い、RAは研究プロジェクトのサポートを担当します。報酬は大学や州によって異なりますが、年間10,000〜20,000カナダドルの補助が得られるケースも珍しくありません。
勤務時間は週10〜15時間ほどに設定されており、学業との両立が可能です。
第三に、カナダ政府や日本の財団が提供する奨学金制度も存在します。
たとえば、「Global Affairs Canada」が提供する奨学金プログラムや、日本学生支援機構(JASSO)による給付型・貸与型奨学金の活用が挙げられます。
これらの支援を受けるには、出願時に「Financial Support Application」などの専用フォームを提出する必要があります。
また、推薦状や研究計画書、成績証明書などの提出も求められるため、早めの準備が肝心です。選考基準は大学ごとに異なりますが、成績や研究実績だけでなく、志望動機や将来の目標も重視されます。
カナダの大学院への進学を目指すには、出願の1年以上前から計画的に準備を始めることが重要です。
出願要件や必要書類は大学やプログラムによって異なるため、希望校ごとに詳細を確認しながら準備を進めましょう。
以下では、準備の流れを時系列で整理し、出願に必要な情報とコツを紹介します。
▼出願の約12〜15か月前(前年の秋〜冬)
進学希望の分野・大学をリサーチ。大学のランキングや研究内容、教授の専門領域、奨学金制度などを確認。
語学試験(IELTSまたはTOEFL)の対策をスタート。
自分の研究テーマやキャリアゴールを明確にする。
▼10〜12か月前(春〜初夏)
英語スコアの取得(できればこの時点で一度受験)。
研究計画書(Research Proposal)のドラフト作成。
推薦状を依頼する教員や上司に連絡。
成績証明書、卒業証明書の英語版を発行依頼。
▼6〜9か月前(夏)
希望する指導教授にメールでコンタクトを取り、研究内容のマッチングを確認。
CV(英文履歴書)を整える。
出願エッセイ(Personal Statement / Statement of Purpose)の作成。
必要であれば2回目の語学試験を受験。
▼3〜5か月前(秋)
オンライン出願システムへの登録・書類提出。
推薦状の提出フォローアップ。
出願料(100〜150CAD)を支払い、提出完了。
出願後〜合格発表・ビザ申請へ
面接(必要な場合)に備える。
合否通知後、学生ビザ(Study Permit)の申請へ進む。
渡航準備、住居探し、保険加入などの手配。
カナダの大学院では、 非英語圏出身者に対して英語能力の証明が求められます。
多くの大学ではIELTSスコア「6.5〜7.5」またはTOEFL iBT「90〜100点以上」が目安とされますが、専攻や大学によって異なるため、事前確認が必須です。
とくにリサーチ中心の大学院ではアカデミック英語力が重視されるため、スピーキングやライティングの力を高める必要があります。
IELTS対策ではエッセイ構成の練習を繰り返すこと、TOEFL対策ではリスニングとリーディングで時間配分の感覚を身につけることがスコアアップにつながります。
毎日の積み重ねが成果につながるため、受験の数ヶ月前から計画的に準備を始めましょう。
研究計画書(Research Proposal)は、大学院出願において非常に重要な書類であり、自身の研究テーマや目的、背景、方法、期待される成果などを明確に記述する必要があります。
単なる興味関心の表明にとどまらず、どのような問題意識を持っており、どのような方法でアプローチし、志望校の研究環境でどのように実現可能かまでを論理的に示すことが求められます。
志望する教授に事前に連絡を取る際は、メールで簡潔に自己紹介と研究関心を伝え、研究計画書の添付とともに意見を求める形でアプローチすると、誠意と熱意が伝わりやすくなります。
教授とのやりとりを通じて、相性や研究環境との適合性を確認できるため、出願前の大切なステップといえるでしょう。
カナダの大学院への出願では、志望校によって多少の違いはあるものの、オンライン上で願書を提出するほか、CV(履歴書)、志望理由書(Statement of Purpose)、研究計画書(Research Proposal)、英語スコア、成績証明書、卒業証明書、推薦状などが一般的に求められます。
それぞれの書類は目的が異なるため、単なる情報の羅列ではなく、構成や記述の仕方に注意が必要です。
たとえば志望理由書では、なぜその分野を選んだのか、将来のキャリアプランとどう関係しているのかを丁寧に説明する必要があります。
推薦状は信頼のおける指導教員や上司などに早めに依頼し、推薦者の負担を減らすためにも必要情報を整理して渡すと良いでしょう。
出願料は大学ごとに異なりますが、1校につき100〜150カナダドル程度が相場です。提出後も出願ポータルを確認し、不備や追加提出の指示があれば迅速に対応することが大切です。
カナダの大学院を卒業した後、多くの留学生は現地での就労や永住を視野に入れたキャリア形成を目指します。
卒業後に最初のステップとなるのが「Post-Graduation Work Permit(PGWP)」の取得です。
これはカナダ政府が提供する就労許可制度で、指定校でフルタイムかつ8カ月以上のプログラムを修了した国際学生に対して、最長3年間の就労許可を与えるものです。PGWPの取得には、学業終了後180日以内に申請する必要があり、申請時には卒業証明書や成績証明書などの提出が求められます。
申請費用はおおよそ255カナダドルで、許可が下りると雇用主を問わずフルタイムでの就労が可能となります。
制度の細かな条件や変更点は頻繁に更新されるため、最新の移民局(IRCC)の情報を確認することが重要です。
PGWPを取得して現地での職歴を積んだ後は、永住権(PR: Permanent Residency)の申請が現実的な選択肢となります。
代表的な申請ルートが「エクスプレスエントリー(Express Entry)」で、この制度では年齢、学歴、英語力、職歴などに基づいてCRS(Comprehensive Ranking System)というポイントが算出されます。
カナダの大学院卒業者は高い学歴ポイントが加算されるほか、PGWPによる就労経験も加点対象となります。
さらに、ブリティッシュコロンビア州やオンタリオ州など一部の州では、大学院修了者向けのPNP(州指名プログラム)を設けており、就職が決まっていなくても永住権申請の対象となるケースもあります。これらの制度を組み合わせて戦略的に進めることで、永住権取得の可能性が高まります。
キャリア面では、カナダの大学院卒業生の多くが地元企業への就職やアカデミック分野での研究活動に進んでいます。
特にSTEM分野(科学・技術・工学・数学)やヘルスケア分野では人材需要が高く、大学院での専門性が高評価される傾向があります。
卒業後の平均初任給は分野によって差がありますが、例えばITやエンジニアリングでは年収5万〜7万カナダドル程度が一般的とされます。
また、研究職や博士課程への進学、起業といった選択肢もあり、日本人卒業生の中には現地企業でキャリアを築き、長期的に定住する例も増えています。
カナダの大学院は研究レベルが高いことで知られていて、高度な研究を中心としたコースの大学院が多いことが特徴です。また、カナダの大学院はほとんどが公立であるため、全体的に学費が安く教育のレベルも安定しているのが大きなポイントです。
カナダの大学院留学にかかる費用は、学費や生活費を含めて1年間で100万円から250万円程度が相場といわれています。
さらにカナダの大学院留学のメリットとして、卒業後には3年間の就労ビザが取得できる点があげられます。海外での仕事や居住を目標とする留学生には魅力的な留学先といえるでしょう。
カナダの大学院への出願は入学の1年前から始まり、入学審査では英語力や学力を証明する試験のスコアやエッセイ、大学の成績表などが必要となります。さらに大学院によっては推薦状やこれまでの研究論文の提出が求められることもあるようです。
入学後は基礎的な知識の勉強から始まりその後は各自の研究が中心となります。大学院によって異なりますが、修士課程で2年間、博士課程では5年から6年間かかるケースが一般的なようです。
今回はカナダの大学院の概要や必要となる費用などについてご紹介致しました。
合わせて、社会人からの大学院留学の概要や必要となる英語力などについてはこちらの記事でまとめていますので、大学院留学を検討している方は、ぜひこちらの記事も合わせてご覧ください。
スマ留では語学留学のサポートをしており、将来大学院への留学を考えている方は、短期の語学留学から始めてみてはいかがでしょうか?
世界2番目の国土を誇る広大な大地と雄大な自然が特徴のカナダは、都市ごとに雰囲気や気候が異なり、 冬にウィンタースポーツが楽しめる都市があるなど四季折々の魅力が溢れています。 多民族国家で移民が多く協調性を大切にする温かい国民性から、異文化の様々なバックグラウンドを持つ人々が仲良く暮らす国としても有名。 留学生が受け入れられやすい環境や雰囲気があり、訛りの少ないニュートラルな英語を話すため、 英語初心者も安心して留学することができます。