多くの日本人にとってあまりなじみがないチップの習慣は、海外旅行などで戸惑う要素の1つだと考えられます。海外でチップを払うタイミングやその金額など、とっさに対応できなかった人もいるかもしれません。
チップの習慣は国や世代ごとに違うものですが、オーストラリアのチップの文化は近年変わりつつあるといわれています。そこで今回は、オーストラリアのチップ文化について解説します。
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オーストラリアの最低賃金は世界的に見ても高水準。2025年時点での最新データをもとに、なぜチップに頼らない文化ができたのかを解説します。
オーストラリアのチップ文化は非常にシンプルです。「基本的には不要だが、良いサービスを受けたときに任意で渡す」というスタイルが一般的です。レストランやカフェでも、必ずしもチップを支払う必要はありませんが、特に気持ちの良い接客を受けたときには、5~10%程度のチップを置く人もいます。
たとえば高級レストランやバーなどでは、チップを置くのがマナーとされる場合もありますが、それでも義務ではありません。レシートの支払い画面に「Tip(チップ)」の選択肢が表示されることもありますが、選ばずにスキップしても問題ない場合がほとんどです。
これは日本の文化とよく似ています。日本でもチップは基本的に存在せず、「料金にサービス料が含まれている」という前提。オーストラリアも同様で、サービス料金があらかじめ商品やサービスに含まれているという考え方が一般的です。
そのため、観光客としては 「チップは基本的に不要。ただし、特別に良いサービスを受けたと感じた場合は、感謝の気持ちとして渡してもOK」と理解しておけば安心です。
オーストラリアでは、最低賃金が世界的に見ても非常に高いことが、チップ文化に大きく影響しています。
2025年時点でのオーストラリアの最低賃金は、時給約24.10豪ドル(約2,300円)と設定されており(※業種や年齢によって変動あり)、サービス業に従事する人々もこの賃金で安定した収入を得ています。
一方、アメリカではチップが前提の賃金体系が存在しており、レストランスタッフなどは基本給が非常に低く、チップが収入の大部分を占めることも少なくありません。そのため「チップがなければ生活が成り立たない」という事情があるのです。
オーストラリアではこうした仕組みがないため、サービス提供者がチップに頼らずとも安定した生活を送れるようになっており、チップ文化が根付いていないのは自然なこととも言えるでしょう。
オーストラリアの人々は、チップをどのように捉えているのでしょうか?
現地の人々に話を聞いてみると、「チップをもらえるのは嬉しいけど、期待しているわけではない」という声が多く聞かれます。実際に働いている人からも「サービスの質はチップの有無に関係なく一定であるべき」という考え方が一般的です。
もちろん、「素敵な接客をしてもらったから、ちょっとしたお礼をしたい」という気持ちを持っている人も多く、チップを渡すこと自体は好意的に受け取られます。重要なのは、「チップを渡さなければならない」というプレッシャーを感じる必要はない、という点です。
都市部のシドニーなど観光客が集まるエリアでは、レシートに飲食代に加えてチップ欄を設けたお店が増えています。これは、シドニー五輪以降は観光客のチップを見込むようになったためだと考えられています。しかし、オーストラリアのチップは強制ではないので、支払わなくても何かを言われることはありません。また、都市部以外であれば、チップを請求する項目も見かけないと言われます。
お店のサービスが良く、再度来店したいと感じたのであればその意思を示すために払いましょう。その反対に、あまり良い印象がなかったのであればチップは支払う必要はないです。また、チップ欄を設けるのも中級以上のレストランがほとんどで、チェーン店などはチップを意識しなくても問題ないです。
オーストラリアではチップは義務ではありませんが、現金でスマートに感謝の気持ちを伝えたいときには、ちょっとしたコツを知っておくと安心です。
「Keep the change」でチップを渡す
レジで会計をする際に、例えば$27.50の支払いに対して$30札を出し、「Keep the change(お釣りは取っておいてください)」と言えば、自然にチップを渡すことができます。額は大体数ドルで十分です。
この言い回しはとてもスマートで、英語に不慣れでも一言で伝えられる便利な表現なので、覚えておくと◎。
テーブルにチップを残す方法
レストランやカフェなど、テーブルでの食事の場合は、お会計後に現金のチップをテーブルに残すのが一般的。以下のような方法があります。
ただし、チップをテーブルに放置するのは盗難防止のためにも必ず帰る直前にしましょう。スタッフが片付けるタイミングで見つけやすい場所に置くのがベストです。
お店によっては、カード決済端末に「チップを追加しますか?」という画面が表示されます。このときは以下のような選択肢が出ることもあります。
ここで好きな金額またはパーセンテージを選ぶだけで、合計にチップが自動で加算される仕組みです。
レストランのチップは合計金額の5%から10%が相場です。あるいは総額が47ドルなら50ドル支払うことでチップ代とするなど、キリのいい額にする方法もあります。
ホテルでチップを渡す習慣は基本ありません。また、オーストラリアに限らず海外のホテルに宿泊した際、1泊ごと枕にチップを置くようにいわれることがあります。しかし、そのチップの習慣は日本人以外では一般的ではないので、長期間滞在した時に置いていくぐらいで問題ありません。
ベルマン(ポーター)は、チェックイン時に荷物を部屋まで運んでくれるスタッフ。荷物の運搬に対して感謝を示したい場合、荷物を運び終えた直後にチップを手渡すのが一般的です。
ベルマンが荷物を部屋に運び終えたタイミングで、「Thank you!」と言いながら、チップを直接手渡すのがスマート。事前に小額紙幣($5札など)を用意しておくとスムーズです。
ハウスキーピング(清掃スタッフ)は、ゲストが快適に過ごせるように毎日部屋を整えてくれる存在。直接会う機会が少ないため、部屋にチップを置いておくのが一般的です。
なお、チェックアウトの際にまとめて渡すのではなく、毎日の清掃に対して渡す方がスタッフに行き届きやすいです。
コンシェルジュは、レストランの予約、観光の相談、交通手段の手配など、滞在中のサポートをしてくれるホテルの“案内人”的な存在です。サービスの内容や手間に応じてチップを渡すか判断するのが一般的です。
ホテルと同じようにタクシー運転手に対して、オーストラリアではチップを渡す習慣はありません。しかし、トランクに荷物を出し入れするのを手伝ってもらった時などに、お礼として渡しましょう。他にも感じの良い運転手だったなど、自分が良い印象を受けたのであれば渡しても問題はありません。
運賃を支払う時チップも同時に渡します。クレジットカードでもタクシーの運賃とチップは支払えますが、運転手へのお礼として考えると直接現金で渡した方が喜ばれるそうです。
タクシーのチップは1~2ドルが相場とされています。また、運賃を払う際におつりが1ドル以下など小銭だった場合は、そのままチップとして渡すとスマートといえます。運転手は基本的におつりをちゃんと返してくれるので、おつりをチップにする際は「Keep the change」といいながら運賃を支払えば運転手にもチップだと伝わるので機会があれば試してみましょう。
オーストラリアでは、UberやDiDiなどのライドシェアアプリが広く利用されており、アプリ内で簡単にチップを追加できる仕組みになっています。現金を用意しなくても感謝の気持ちを伝えられるのが嬉しいポイントです。
ライドが終了すると、アプリ上にドライバーの評価画面が表示されます。この画面で、星を使ってサービスを評価すると、続いて「チップを追加しますか?」という画面が表示されます。
選択肢の中から好きな金額をタップするだけで、クレジットカードやアプリに登録した支払い方法で自動的にチップが加算されます。
ドライバーの星評価(★)とチップは別々に操作可能です。サービスが良かったけどすぐにチップを追加し忘れた…という場合でも心配は不要。乗車後30日以内なら、アプリの「乗車履歴」からチップを追加できます。
オーストラリアでは、レストランやホテル以外にも、美容院、スパ、宅配サービス、バーなど日常的なサービスの場面でチップを渡すことがあります。ただしどのケースでも、「チップは任意」であり、強制ではありません。以下では、それぞれの場面での一般的なチップ事情とスマートな渡し方をご紹介します。
オーストラリアの美容院やスパでも、サービスに満足した場合は感謝の気持ちとしてチップを渡すのが一般的です。特に高級サロンや個人経営のスパでは、心遣いとしてチップを添えると丁寧な印象を与えられます。
渡し方のポイント
注文確定時または受け取り後に、アプリ上で**$1〜$5程度**を追加する形式
注文時の画面に「チップを追加しますか?」と表示され、$2 / $3 / $5 / カスタムなどの選択肢が出ます
アプリによっては、配達後にドライバーの評価画面から後からチップを追加することも可能です。
バーやパブでは、一般的に毎回の注文ごとにチップを渡す習慣はありませんが、印象の良い対応やお酒のサービスが素晴らしかった場合に少額のチップを置く人もいます。
常連客の間では、お気に入りのバーテンダーに「Can I buy you a drink?」と声をかけ、その分の料金をチップ代わりに支払う習慣もあります(実際にはお金を受け取るかドリンク代として処理されます)。これはフレンドリーな関係を築くための文化的な表現です。
シーン | チップの目安 | 備考 |
レストラン(フルサービス) | 会計の5〜10% | カジュアル店なら不要なことも |
カフェ・ファストフード | 基本的に不要 | 気持ち程度に$1渡す人も |
ホテル(ベルマン) | 荷物1個につき$2〜$5 | 受け取り直後に渡す |
ホテル(ハウスキーピング) | 1日あたり$2〜$5 | 枕元やデスクにメモ付きで置く |
コンシェルジュ | $5〜$20 | 特別な手配や予約をしてもらった場合 |
タクシー/Uber | $1〜$5 or 小銭のお釣り | アプリ内でも追加可能 |
デリバリーサービス | $2〜$5 | 天候不良時などはやや多めに |
美容院・スパ | 料金の10〜15% | 複数スタッフにはまとめてでもOK |
バー・パブ | $1〜$2 / 会計の5〜10% | カウンターに置いたり会計時に渡す |
チップといっても、そのあり方は国や地域それぞれです。チップを渡すのが当然の国もあれば、習慣がない国もあります。オーストラリアでは、チップとはサービスを自分に対し行ってくれたことに対するお礼であり、該当しない時は支払う必要はありません。
サービスに対する感謝を伝えることが目的なので、チップのことを考えすぎて滞在中緊張し続きでは疲れてしまいます。あまり力まず、自然にチップを渡すことも大切といえます。
このように、あらかじめチップの習慣を知っておけば現地で慌てることも減るはずです。オーストラリアのチップ文化について理解し、ぜひ現地で挑戦してみましょう。
Q&AまとめQ&A
オーストラリア留学は、海外渡航経験の少ない方にも自信を持っておすすめできます。 気さくでフレンドリーな人柄が魅力のオーストラリアは、多文化・多民族国家であるゆえ、外から来た人も馴染みやすく、何度も訪れたくなる心地よさがあります。 他の国に比べて留学生に対する制度が充実していて、国を挙げて手厚くサポートする体制が出来上がっているため、不安が多い海外生活も安心して送ることができるでしょう。 期間や渡航スタイルの選択肢が広く、短期留学やワーキングホリデーなど自分に合った形を選ぶことができるのもオーストラリア留学の大きなメリットです。