大学や英会話学校などで英語を勉強してきた人のなかには、翻訳の仕事にあこがれを持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。英語の専門家として活躍できる翻訳家は、英語関係の職種において花形的なポジションでしょう。
しかし、翻訳家の仕事風景やなるための勉強法など、この職業はなにかと疑問が多いかもしれません。この記事では、翻訳の勉強で重要なポイントや翻訳家になるために大切なポイントをご紹介していきます。
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翻訳家とひとことでいっても、大きく分けて3種類の分野に分けられることをご存じですか。それは、「文芸翻訳」「映像翻訳」「実務翻訳」です。文芸翻訳では小説や雑誌などを、映像翻訳では映画やテレビ番組などを、実務翻訳では機械の取扱説明書や論文などを取り扱います。
翻訳家は大きくこの3分野がありますが、さらにそのなかでも専門とする分野を持っています。そして、一般的にほかの分野をまたぐことはあまりないようです。その理由は、翻訳家は英語のスペシャリストでありながら、専門分野に深く精通していなくてはならないからです。
また、翻訳家にはフリーランスと会社員の2種類があります。フリーランス翻訳家は、翻訳会社や企業から直接「業務委託」として仕事をもらう形態です。そのため、仕事をもらうための営業力、自分で仕事の進行を管理するマネジメント能力が求められます。
会社員で翻訳をしている人は、会社や業種にもよりますが、会社が受注した仕事をチームでこなします。そのため、会社員としての全般的なスキルや客先や同僚とのコミュニケーション能力が重要なのです。
このように、翻訳の勉強は英語中心だと思われるかもしれませんが、業界の専門知識や、社会人としての自己管理能力やコミュニケーション能力などを学ぶのも大切です。
この章では、翻訳の勉強で大切な「読解力」「文法力」「表現力」の3つのポイントをご紹介していきます。
3つのなかでもっとも重点を置いて勉強するべきなのが、読解力です。読解力とは、文章の内容や隠れた意図を理解するスキルです。翻訳では技術やIT、科学、医学など、専門性が高い文書をあつかいます。翻訳家は専門的な知識や適切な表現方法を知らないため、文書を理解するのは非常にむずかしく感じるでしょう。
しかし、仕事として翻訳をしているのなら、むずかしいことを理由に仕事を投げ出すことはできません。参考文献を読んだり、専門家に説明してもらったりしながら、文書を理解しなくてはならないのです。翻訳の勉強では、あえて内容がむずかしく理解できない分野の文書を教材に選ぶようにし、読解力を伸ばすようにしましょう。
2つ目のポイントである文法力は、翻訳した文書をお客さんや消費者に読んでもらう際に必要不可欠なものです。正しい文法でなければ内容を正確に伝えることはできませんし、読んだ人に「この文書は信頼できない」と不信感を感じさせてしまうでしょう。
英語を得意としている方のなかには、英会話はできても正しい文法で話したり、書いたりすることを苦手としている方もいます。しかし、翻訳家になるには、文法の正確性が重要なのです。翻訳の勉強では、学校の勉強に立ち返り、文法力に磨きをかけることも大切です。
3つ目のポイントである表現力とは、内容を正確に分かりやすく伝えることです。読み手が違うとらえ方をしてしまったり、文章の解釈がいくつもわかれてしまったりしないように、正確な内容で記述することを心がけましょう。そのためには、文法力のほかに、語彙力や表現の引き出しを増やすことが大切です。
翻訳の勉強を積み重ね、専門の翻訳家として仕事を始めるためには、英語力以外にどんなスキルが必要なのでしょうか。翻訳家になるには、TOEIC800点や900点のような高い英語力に加えて、業界の知識が必須です。なぜなら、専門性の高い内容を翻訳する仕事であるため、専門分野に精通していなくてはならないからです。
そのため、翻訳家のなかには、以前にその業界で仕事をしていた方や大学や大学院で高度な研究をしてきた人なども多いようです。英語が得意で翻訳家の求人に応募する方が多いなか、その業界に精通していることは、ほかの応募者に比べてアドバンテージになるでしょう。
特定の業界についての専門知識や実務経験がない方は、いったんその業界の仕事を経験してから、翻訳職にキャリアチェンジを考えてみるのも1つの手段ではないでしょうか。
翻訳の勉強は英語力の強化が中心ですが、勉強方法の1つに留学があります。留学にはさまざまな種類がありますが、通訳・翻訳コースで勉強する「通訳翻訳留学」はいかがでしょうか。日本語と英語の通訳・翻訳コースでは、英語で翻訳技術を勉強できます。
通訳翻訳留学のメリットは、ネイティブから英語を学べることです。日本語から英語に翻訳した文章を、ネイティブの視点で指導してもらえるのは、日本の翻訳スクールではあまりみられないポイントでしょう。また、留学先で英語漬けの生活をすることで、英語表現の引き出しが大きく広がることも期待できます。
そして、選択するコースにもよりますが、試験に合格することで留学先の翻訳資格を取得できるケースもあります。たとえば、オーストラリアではNAATI (National Accreditation Authority for Translators and Interpreters)という翻訳家の国家資格があります。NAATIの公認を受けている学校の翻訳コースを修了して試験をパスすると、NAATIが取得できるのです。
現地の翻訳資格や学位を取得できれば、翻訳家として高い能力があることの証明になります。日本だけでなく海外で翻訳の仕事を探す際に、海外の資格・学位や通訳翻訳留学の経験が、大きなアピールポイントとなるでしょう。
翻訳の仕事は大きく「文芸翻訳」「映像翻訳」「実務翻訳」の3種類に分けられ、そのなかで翻訳家ごとに専門分野を確立しています。また、翻訳家には、自分で直接仕事を請け負うフリーランスと、企業に勤務して翻訳の仕事をこなす会社員がいます。
翻訳の勉強をする際には、「読解力」「文法力」「表現力」の3つのポイントが大切です。専門性が高い文書の読解、正しい英文法、正確で細かい表現、この3点を重点的に勉強するようにしましょう。
そして、翻訳家として仕事を探す際には、高い英語力だけでなくその業界に精通していることも重要です。実務経験や専攻分野があまりない人は、まず会社員としてその業界を経験してから翻訳の仕事に転向してみるのも、1つの手段でしょう。
また、海外に翻訳留学をし、ネイティブからの指導を受けて翻訳技術を磨くことも、翻訳家としてのアピールポイントになります。