グローバル社会になり、留学は今や特別な選択肢ではなくなりました。留学というと高校生や大学生など学生がするイメージが強いかもしれませんが、実は社会人でも留学はできるのです。中には、社会人用のカリキュラムが用意された大学院もあります。しかし、留学にはメリットとデメリットが隣り合わせになっている場合もあり、また多くの費用と時間もかかるため、失敗だけは避けたいでしょう。自分に留学が必要かどうかを見極めるためにも、社会人留学の概要については知っておきたいところです。
今回は、海外大学院留学についての基礎知識や必要な英語力などについて説明します。
また、社会人留学の概要についてはこちらの記事でまとめておりますので、社会人になってからの海外渡航をお考えの方は、ぜひこちらもご覧ください。
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海外の大学院留学の場合、期間は1~2年が一般的です。種類は学術系大学院・専門職系大学院が主となります。目的としては、語学研修というよりキャリアを重視した形になります。留学を通して実践力を学び、仕事に活かせる力を身に着けることが目的です。
社会人留学は、会社を休職・退職して自主的に行くこともあれば、会社の研修・インターンシップで行くこともあります。もし留学を考えているときに後者のような機会にめぐり合うことがあれば、これを逃す手はないといえるでしょう。
社会人留学は、大きく3種類に分けられます。キャリアアップを目的としたもの・スキルアップを目的としたもの・スキルアップとリフレッシュを目的としたものです。
キャリアアップを目的としたものは、大学・大学院留学や企業インターンシップを利用するなどして留学することが多いです。こういったスタイルは、明確なキャリアプランが決まっている人にはおすすめといえるでしょう。なぜなら、高度な英語力が身につくうえ、専門分野の知識も得ることが可能だからです。また、英語力と専門分野の知識を得ることで、就職が有利になるといわれています。こういったキャリアアップ留学の主な目的は、学士・博士号の取得です。
スキルアップを目的としたものは、語学学校・大学付属の語学コースを利用して留学します。このため、語学力をみがくことが可能です。語学コースでは、会議やプレゼンなどで使える英語を学ぶビジネス英語コース・英語力の証明に使えるTOEICやTOEFLの試験対策コースなどは選ぶ人が多いでしょう。こういった語学コースの入学自体には高い英語力は必要ないことが多く、レベル別学習でもあるため、自分のレベルに合った学習をすることができるのが特徴です。
スキルアップとリフレッシュを目的としたものも、語学学校・大学付属の語学コース等を利用して留学します。この場合は、現地でアルバイトをしながら語学学校に通い、その合間にボランティアや旅行をするというのが一般的な過ごし方です。自由にプランを組めるため、自分の好きな形の留学をプランニングできるのが魅力でしょう。ちなみに、このタイプの場合、ワーキングホリデービザを使うことになります。ワーキングホリデービザの取得には年齢制限があるのが注意点です。制限されている年齢は国によって違いますので、事前の確認が必須となります。
さらに、ワーキングホリデーの場合、通学期間・労働期間も国によって決められているので、こちらも渡航先の規則を事前に確認しておく必要があるでしょう。また、ワーキングホリデーの場合、生活費は現地のアルバイトで賄うことになるので、ある程度の貯蓄が必要です。できれば3カ月程度は働かなくても生活できるほどの貯金は準備しておくべきでしょう。なぜなら、すぐに採用されないことも考えられるからです。海外で金欠ということになったら大変なので、資金は余裕をもって用意しておくといいでしょう。
ちなみに、語学留学のなかには、ボランティアとセットになっているものもあります。ボランティアは1~2週間の短期から、1年ほどの長期まで幅があります。職種はチャイルドケア(児童教育)や介護がメインです。こういった留学スタイルでは、保育士・教員・介護士の資格や経験があると非常に有利といえるでしょう。ボランティアとセットになっている場合、それをきちんとこなせる人がやはり入学しやすいといえるからです。
海外の大学院留学に行く場合、英語力は欠かせません。最低でもTOEFL 90もしくはIELTS 6.5以上の英語スコアが必要です。英語スコアの取得は、海外留学には欠かせない大きな関門なので、できれば留学本番前の1~2年前から勉強を始めておくべきでしょう。特に自分の英語力に自信がない場合は、留学の文字が頭をちらつき始めた段階で始めてもいいくらいです。
留学前の語学力は、留学の成否を分ける重要なポイントでもあります。なぜなら、留学時の語学力が低い場合、本来なかったはずのデメリットが出てくるからです。語学学校の場合は、個人の英語力に合わせたクラスに入ることができますが、その場合現地の人との交流が少なくなってしまいます。
また、語学力に自信がない場合、積極的に現地の人と交流を持つことが難しくなる可能性があるでしょう。異文化交流という留学の大きな意義がひとつ失われてしまうことは、非常に残念なことです。そうならないためにも、最低限日常会話に困らない程度の英語力は持っておく必要があるでしょう。
社会人留学には、主に3つのよさがあります。
1つ目は、キャリアアップを期待できるという点です。社会人の場合、すでに何らかの仕事に従事しているため、学生よりも留学とキャリアの関係が直結しています。留学の目的も「将来のため」というよりは「この仕事のために必要」などはっきりしていることが多いでしょう。キャリアアップがより確実に見込める点は、社会人留学の大きな利点です。
2つ目は、英語力に加え専門性が身につくという点になります。大学院に留学するので、大学よりも一段上の専門研究を行うことが可能です。それにより、英語力に加えて高い専門性を身につけられます。ここで身につけた高い専門性は、そのまま仕事に活かすことができるので、これも利点といえるでしょう。
3つ目は、異文化体験ができるという点です。海外留学全般にいえることですが、異文化体験は見聞を広げる意味でとても重要となります。やはり、人間は体験したことのないものは理解できないものです。異文化体験によって見聞が広がれば、仕事における視野の広さにもつながるでしょう。自分の知っていることがすべてではないと知ることは、社会人としてとても大事なことといえます。
社会人留学には、リスクもあります。留学先における成果、つまりキャリアを明確にしないまま帰国すると、逆に再就職や転職が不利になることがあるのです。帰国後に再就職する際、面接のときに「留学で何を得られたと思いますか」といった旨の質問は必ずされるでしょう。そのときに自信をもって「こういうことを学びました」と答えられない場合、単に時間をロスしたとしか受け取ってもらえないかもしれません。これを防ぐには、何のために留学するのかを最初から明確にしておく必要があります。社会人留学のリスクを最小限に抑えられるよう、きちんと目的意識を持って留学するようにしましょう。
また、帰国後のキャリアを明確にするのが難しいというリスクもあります。留学前に帰国後のキャリアイメージを固めておくことが大事です。また、再就職の際に「なぜ日本を離れたのか」という質問は必ずされると思っておきましょう。その答えも明確にしておかないと、帰国後のキャリア形成が難しくなってしまうかもしれません。
さらに、留学前に期待していたほど語学力が上がらないこともありえます。なぜなら、せっかく留学しても日本人とばかり交流してしまう場合があるからです。語学留学の場合、レベル別で授業が行われるため、レベルの低いコースに入ってしまうとこのパターンに陥る可能性が高くなります。レベルの低いコースに入ってしまうと、高レベルな勉強はできませんし、何より、そこには日本人が多くいる場合があるのです。結果、現地の人との交流が満足に行えなくなる可能性が高くなるでしょう。これを防ぐためには、事前にクラスの国籍バランスや日本人の比率を確認しておくことがおすすめです。
評価が高い留学のなかに、MBA留学というものがあります。MBA留学のMBAとは、経営学修士のことです。日本語ではビジネススクールまたは経営大学院などと呼ばれています。従来の大学院はアカデミックスクールと呼ばれているため、2つは明確に区別されているのがわかります。平たくいうと、ビジネススクールは幅広いテーマ・講義中心・グループワークに重点をおいた教育方式が採用されたものです。
それに対し、アカデミックスクールはテーマを絞った研究に重点を老いた研究者養成機関となります。つまり、MBA留学とは、このビジネススクールへ留学するということです。
MBAのカリキュラムでは、経営における4大資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を必修として体系的に学びます。ヒトの項で学ぶのは組織戦略・人事戦略・リーダーシップ・コミュニケーションなど、モノの項で学ぶのは戦略・マーケティング・オペレーション・サプライチェーンなどです。カネの項で学ぶのはアカウンティング、ファイナンスなど、情報の項で学ぶのはR&D戦略・ナレッジマネジメント・統計などになります。また、学校によってはさらに別の科目も必修に加わっており、それはマクロ経済・ミクロ経済学などです。
MBAの選択科目には、ファイナンス・マーケティング・HRマネジメント・アントレプレナーシップ・NPOマネジメントなどがあります。
ちなみに、MBAプログラムの特徴は、実地学習重視という点です。カリキュラムの一貫で、企業インターンシッププログラム・企業とのコラボレーションを行うほか、新興国訪問プログラムなどを用意しているMBAもあります。こういった特別カリキュラムにはスクールごとの特色が大きく反映されるため、志望校選択の際には重要な選択基準としてチェックしておくといいでしょう。
MBA留学では経営学の修士号を取得することができ、さらにビジネスにおける高度な知識を身に着けることができるのです。この大学院進学には、高い語学力が求められることになります。そのため、多くの場合はすぐに大学院入学はせず、まずは院進学コースに入学して英語力を習得するのです。
また、MBA留学は社会的評価が高いことも利点となります。やはり、社会的評価が低いよりは高いところに留学した方が、後々のキャリアに好影響を残すことができるでしょう。
社会人留学を考える際に覚えておきたいことは、再就職・転職の際に留学期間をブランクとして受け取られる可能性があるということです。留学をしている間は当然社会人としての仕事から離れているわけですから、人によってはその時間を社会人としてのブランクと捉えます。留学期間が長いほどこの危険は高くなってしまうので、社会人留学は1~2年間程度にしておくことが多いのです。留学期間イコールブランクというイメージからの悪影響を防ぐには、そういったマイナスなイメージを払しょくできるほどに有意義な留学生活を送ることが大事となります。
具体的には、現地の人との積極的な交流だったり、その国その土地だからこそできた経験などでしょう。日本で働く以上の有意義な経験をし、さらにそれをどのように今後のキャリアに活かせると考えているかという点をうまくプレゼンできればベターです。そうすれば、留学に対するマイナスイメージを払拭できるかもしれません。
海外への留学の場合、費用もそれなりにかかります。たとえばMBA留学の場合、MBAの学費・留学中の生活費・交際費、雑費が必要になるでしょう。
学費は、為替レート・履修期間・立地などによって金額に開きがあるため一概にはいえませんが、相場としては年間200万円から700万円程度です。また、MBAランキングで上位になる学校ほど学費が高くなる傾向があります。場合によっては、相場以上の学費がかかることもあるので、注意しましょう。
留学中の生活費に関しても、個人差が出るため一概にはいえませんが、食費・交通費などを含めると年間150万円から250万円程度かかります。住居を都市部に構えるか郊外にするかでも異なるので、物価が安い土地を選ぶといったような工夫をするといいかもしれません。
生活費・雑費は、一般的には年間20万円程度に収める人が多いです。当然ですが、生活水準を高くしようとすればするほど交際費は高くなります。MBA在学中は勉強にのみ集中することを徹底すれば、ある程度の節約は可能です。
社会人留学は、費用がかかるうえ、よくも悪くも学生留学より直接的にキャリアや仕事に影響します。その分、実践力や専門性をより実践的な形で得ることができるでしょう。仕事に必要な実践力や専門性を身につけたいのであれば、海外の大学院留学を検討してみてはどうでしょうか。
※当社では、大学院留学はご紹介できかねます。 あらかじめご了承ください。
またこちらの記事で、社会人向けの奨学金を紹介していますので、留学をお考えの方や留学費用にお悩みの方は、ぜひこちらもご覧ください。