働きながら海外生活を経験し、専門技術を学んだり、外国語の習得を目指しらりすることができる「ワーキングホリデー」は、留学を考える若い世代に人気の取り組みです。
通常、ビザには制限があり、外国では誰もが簡単に働けるわけではありません。「ワーキングホリデービザ」は、就学、就労、観光が同時に可能な特別なビザなのです。取得には特別な要件があるため、「自分が条件を満たしているか」「どのように取得すればよいのか」について分からないという人も多いのではないでしょうか。
この記事では、オーストラリアでワーキングホリデー留学をする際の基礎知識やビザ申請について詳しく説明していきます。
また、ワーキングホリデーの概要についてはこちらでまとめておりますので、ワーキングホリデーでの渡航をお考えの方は、ぜひこちらもご覧ください。
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ワーキングホリデー制度とは、相手国の青少年が自国で一定期間の休暇を過ごし、その間の滞在費を補うための就労を互いに認める目的で定められた制度です。2つの国、地域間で取り決められ、どの国とでも結ばれているわけではありません。
2018年4月現在、日本はオーストラリアをはじめ、ヨーロッパ、アジア、南米、北米の20の国と地域の間でのみ締結しています。この中で1930年に最初に協定を結んだのがオーストラリアです。
ワーキングホリデービザは締結国との間でのみ発給されるもので、海外での観光、就学、就労が同時に可能なビザです。対象となるのは18~30歳までの青少年で、就学や就労する期間には条件があります。ビザの有効期限内は出入国が何度もできるのも特徴です。オーストラリアは日本との時差が少なく、格安航空券を手に入れれば手ごろな価格で行き来できる国です。不測の事態で帰国が必要になっても、行き来が便利な地域だといえるでしょう。
ワーキングホリデービザは、通常、最長で12カ月、1つの国につき1回のみしか滞在できません。しかし、締結国の中で、オーストラリアとイギリスだけは2度のワーキングホリデーを認めています。1雇用主のもとでは原則として最長6カ月の就労でき、就学、トレーニングは最長4カ月まで可能です。オーストラリアの場合、子どもの世話をする「オーペア」と呼ばれる職種や、限られた地域での農業、養殖、林業など一部の職種で最長12カ月の就労が認められる場合もあります。12か月間連続して就労する場合は、移民局への手続きが必要です。
ワーキングホリデーが終了した後も、協定を結んでいる別の国であれば、再びワーキングホリデービザを取得できます。さまざまな国を渡り歩いて見識を深め、1つの国で経験したことを別の国で生かす働き方ができるのも魅力の1つです。
オーストラリアのワーキングホリデービザの申請は、インターネットで行うことができます。申請に必要なものがいくつかあるので、あらかじめ用意しておきましょう。まず、必要なのがパスポートです。滞在予定期間を満たしているものを準備しましょう。
ワーキングホリデービザを取得後、1年以内にオーストラリアへ渡航しなければならないため、スケジュールを確定させた段階で申請した方がよいでしょう。パスポートの発行には数週間かかります。パスポートの有効期限を確認し、満たない場合は早めに手続きを行うと安心です。
次にクレジットカードを用意しましょう。クレジットカードは申請料金を決済する際に必要なだけなので、自分名義のものでなくても問題ありません。ただし、海外生活ではクレジットカードを身分証明として使うことができるため、持っておいた方が良い場面がたびたびあります。クレジットカード決済ができる店も多く、現金を持ち歩くより安全だともいえるでしょう。この機会に自分名義のクレジットカード、もしくは家族カードなどを作っておくと、海外生活をスムーズに送ることができます。
ワーキングホリデービザの申請料金決済ができるのは、Visa, MasterCard, American Express, Diners Club International, JCBのいずれかです。
申請手続きはオンラインで行います。パソコンではなくスマホを使う人が増えていますが、慣れない英文を読まなければならないため、パソコンを使った方がよいでしょう。スマホによるタップミスがないので、チェックのミスによる再申請のリスクも防げます。
申請に関する連絡や報告、ビザ発給は、メールで行われるので、パソコンで使用できるメールアドレスも取得しておいた方が良いでしょう。スマホのメールアドレスの場合、セキュリティの問題などでメールが届かないといったトラブルもおきがちです。目安としては申請後1週間以内に移民局から連絡が来るので、見落とさないようにチェックしておきましょう。
1度で申請が受諾されれば良いのですが、追加書類が必要な場合や、記入ミスがあって再度申請が必要な場合もあります。申請後に間違いに気づいた場合などは、メールでの連絡が必要です。ビザがとれたことを連絡するメールには「IMMI Grant Notification」という名前のファイルが添付されているので、渡航の際には印刷して忘れずに持っていきましょう。ビザの使用期限や条件も書かれているので、詳しく確認しておくことが必要です。
ワーキングホリデービザは就学、就労、観光のすべてを行うことができる特別なビザです。そのため誰でも取得できるわけではなく、さまざまな申請条件があります。自分が当てはまるかどうかを確認してみましょう。
ワーキングホリデービザは原則として1つの国につき1回しか申請できないため、以前にワーキングホリデービザでその国に入国したことがないことが前提となります。申請できるのは、申請日に18歳以上31歳未満の人のみです。これは、ワーキングホリデー制度が、青少年に対して滞在する国の文化や生活様式を理解する機会を提供するために設けられている制度だからです。
ビザを取得後1年以内に渡航しなければならないというルールがあるため、滞在期間を考えて申請する必要があります。年齢制限の上限が迫っている場合は、なるべく早めに申請し、1年以内に渡航できるようにスケジュールを組みましょう。年齢制限はビザを取得する日ではなく、申請する日の年齢で定められています。「31歳の誕生日を迎えるまでに申請すれば、渡航時に31歳になっているとしてもビザを取得する要件を満たせる」というわけです。
申請日、ビザ発給日ともに、オーストラリア国外にいることも申請条件です。留学などで、すでにオーストラリアに滞在している人は対象外なので気をつけましょう。ワーキングホリデービザの有効期間は1年間です。オーストラリアに12カ月以上滞在する意思がある場合は、ビザの申請をすることができません。また、子どもがいる人であっても、扶養する子どもを家族として記載することができないため、注意しましょう。子どもを同行させたい場合は、子どものための別のビザを取得しなければなりません。
最後に、オーストラリアとワーキングホリデープログラム協定を締結している国のパスポートを持っている必要があります。日本とオーストラリアは協定を締結しているため、日本国籍の人は、滞在中有効な日本のパスポートを保持していれば問題ありません。
当然のことですが、どの国でも危険と思われる人物を国内に入れたくはありません。ワーキングホリデーで滞在する人にも、オーストラリアの法律を満たしている人物であることが求められます。オンライン申請の際に人格や思想、犯罪歴について問う項目があり、その回答をもとに人物審査が行われます。
例えば、「国際手配の対象になったことがあるか」「犯罪に関与したことがあるか」「国外退去になったことがあるか」などの質問がこれにあたります。まれですが、「無犯罪証明書」の提出を求められることがあり、この場合は審査に時間がかかることもあります。
ワーキングホリデービザの申請には、健康診断を求められるケースがあります。
・過去に日本以外の国に住んだことがあるか
・オーストラリア滞在時に病院などを訪れる可能性があるか
・子どもと接触する育児施設で働く予定があるか
上記のような質問に「Yes」と答えた場合は、健康診断の対象になります。項目の中には「オーストラリア滞在中に学校へ通う予定があるか」を尋ねるものがあり、この項目にチェックすると同様に健康診断を受けることになります。しかし、ここでいう「学校へ通う予定」は教師として学校で働くことなどを指し、語学学校に通うことではありません。生徒として学校で学ぶ場合にはチェックの必要はありません。チェックした項目ごとに、必要な健康診断の内容も異なります。
基本的に必要なのは胸部レントゲン検査で、教育施設で働く場合や、訓練する予定がある場合、該当する病歴がある場合は内科検診も必要です。医療機関で働く予定がある場合や、医療系の職業に就くための勉強をする場合は、これらに加え、HIV、B型肝炎、C型肝炎の検査も求められます。オーストラリアで出産予定の場合はB型肝炎の検査が必要です。
健康診断はどの病院でも可能なわけではありません。オーストラリア移民局と提携している病院で受診する必要があり、2018年現在、北海道、東京、兵庫、大阪、福岡の5都市でしか受診することができません。大都市を中心に限られた地域にしかなく、地域に偏りがあるため、遠方にでかけて受診しなければならない可能性が高いといえるのではないでしょうか。
健康診断対象者に当てはまりそうな場合は、あらかじめ診察に行く日程を調整しておきましょう。受診料の目安は、胸部レントゲンは2000~3000円程度、内科検診は3000~4000円程度とされており、申請費用とは別に必要です。受診後は検査結果を移民局に提出する必要はありません。病院から直接手続きがなされるため、ビザ発給についてのメールを待つだけです。
オーストラリアのワーキングホリデービザを申請する場合には、オーストラリアで生活する十分な生活資金、往復の旅費があることを証明しなければなりません。原則は5,000豪ドル以上の資金証明が必要とされています。資金証明に必要な書類は、銀行の窓口で発行される「残高証明」です。発行には窓口に本人が出向く必要があります。証明したい口座のお届け印を持参して手続きを行いましょう。発行には手数料が必要です。即日発行ではなく、1週間程度で郵送されてくることが多いため、余裕をもってスケジュールを考えておきましょう。
資金証明の提出が求められるケースはまれですが、入国の際に必要となる場合もあります。このときに残高証明と一緒に用意しておくとよいのが復路の航空券です。往復の旅費がある証明になります。仕事には恵まれているとされるオーストラリアですが、渡航直後から働けるケースはまれです。さまざまな状況を想定して、十分な金銭的余裕をもって渡航できるように準備しておきましょう。
通常、ワーキングホリデービザで訪れることができるのは1つの国、地域につき1回のみなのですが、オーストラリアでは「セカンドワーキングホリデー」が認められています。1度目のワーキングホリデーでオーストラリアに滞在したときに、88日間以上特定の業種に従事していることが条件で、証明書を提出することによってビザの申請が可能です。
セカンドワーキングホリデーを検討しているなら、1年目のワーキングホリデー時に、対象となる業種で働く期間を計画しておく必要があります。
特定の業種とは、オーストラリアにおいて労働者が不足している家畜、酪農、水産、真珠採取、林業、建設産業、採鉱産業などの業種のことで、有給であることが条件です。ボランティアは対象外なので気をつけましょう。ビザ申請の条件は、申請時に30歳以下であること、滞在期間は1年間、就学期間は最長4カ月、就労は同一雇用主の下で最長6カ月など、1度目のときとほぼ同じです。
しかし、オーストラリア国内に滞在しながらビザ申請が可能、という点は大きく異なります。
セカンドワーキングホリデーの場合、もしオーストラリア国内でビザ申請を行った場合は発給されるまで滞在し続けなければなりません。オーストラリア国外から申請した場合は、発給時にも国外にいる必要があります。
この点が1度目と異なるため、上手にスケジュールを組んで申請しましょう。スムーズに申請、発給手続きが進めば、帰国せずに2年目のワーキングホリデー生活に突入することも可能です。
同じ国に2年間滞在できるため、多くのメリットを享受できます。新たな環境に適応するための期間も必要ありません。1年目に、仕事や交友に問題のないレベルの語学力を身につけておけば、2年目は、英語を使った仕事や人脈作りへとステップアップさせていくこともできます。現在、セカンドワーキングホリデーが認められているのはオーストラリアとイギリスだけです。せっかくオーストラリアに行くならこの制度を利用してみましょう。
オンラインで手軽に行うことができるビザの申請ですが、当然のことながら全文英文で記載されています。思いのほか時間がかかり、一生懸命入力しても記入ミスなどで再申請を行わなければならないケースが多い傾向です。こうしたトラブルを少しでも防ぎ、スムーズな申請をするための注意点を紹介します。オンライン申請時によくあるトラブルが、英数字の入力トラブルです。先の画面に進めないというトラブルの場合、全角英数字で入力しているケースが多いようなので気をつけましょう。入力は半角英数字で行うと覚えておくとよいでしょう。
スマホでも申請はできますが、チェックミスや文字の読み間違いを防ぐためにもパソコンを使って申請したほうがおすすめです。慣れない英文を読むためには画面が大きいほうが良く、うっかりタップミスをして別の項目にチェックを入れてしまうような平凡なミスも避けることができます。
パソコンを使えば、申請中に疑問に思った点などをインターネットで調べることもでき、便利です。保存しておきたいページを印刷するときにもパソコンからのほうがスムーズに作業できます。
ワーキングホリデービザはビザの取得から1年以内にオーストラリアに渡航する必要があります。ビザは申請から数時間で発給される場合もあり、少なくとも1週間以内に取得できたかどうかの連絡や、ビザ発給の書類が添付されたメールが届きます。そのため、思いのほか早く届いて予定していた渡航期間と合わないということがないように計画的に進めましょう。
ビザを取得したら、まだ渡航まで日にちがあるからと先延ばしにせずに、できるだけ早く航空券の手配を行いましょう。滞在先での生活費を考えると、旅費はできるだけ節約しておきたいものです。幸いにも日本とオーストラリアの間にはLCCが就航しており、格安航空券を手に入れることができます。バーゲン期間中に購入すればさらに安く渡航費を抑えることができるので、キャンペーンを賢く利用しましょう。
注意点は、払い戻しができないLCCが多いことです。渡航日がはっきりしない段階でチケットを押さえるのであれば、キャンセル要項や搭乗日時が変更できるチケットなのかなどを確認したほうがよさそうです。
航空券を購入する際には、ホストファミリーなどと連絡を取り、早めに日程を決めておくのが最も良い方法といえるでしょう。オーストラリアでは日曜日は教会に行く人が多く、平日の日中は仕事で留守のケースがほとんどです。ホームステイをする場合、到着日を土曜日にすると、家族が揃っている状態で受け入れてもらうことができます。具体的な日程が決められなくても、受け入れ先の都合の良い曜日だけでも先に聞いておくと、渡航日を決める際の目安にできます。
ビザの申請と同時に進めたいのは滞在先の手配です。滞在先は、ホームステイ、シェアハウス、寮などの選択肢がありますが、初めて渡航する際はホームステイか寮を選ぶのがよいようです。
ホームステイは食事が用意されていることが多く、地域のことをよく知っているホストファミリーと暮らす安心感もあります。留学生やワーキングホリデー利用者の受け入れ経験がある家庭なら、相談に乗ってもらうこともできるかもしれません。寮には同じ境遇の留学生やワーキングホリデー仲間がいるため、励まし合いながら生活を楽しむことができます。世界各地からの滞在者と仲良くなり、友達を増やすこともできそうです。
一方でシェアハウスは、どのような人が住んでいるかを把握するのが難しいため、最初の滞在先としては向いていません。ホームステイや寮生活を経て、地域のことや習慣をよく理解してから住むとよいでしょう。
どの滞在先であっても、最初は通う予定の語学学校や、働く予定の場所に近いところを選び、生活に不便を感じずに済むよう住環境を整えることが大切です。住んでみたい憧れの地域があるかもしれませんが、数カ月生活して地域の情報を十分に手に入れてからでも遅くありません。家賃や治安事情を把握してから好きな場所を選ぶことができ、渡航当初にストレスを感じずに済みます。
最後に、忘れずに行いたいのが公的な手続きです。海外に1年以上暮らす場合は「海外転出届け」を出す必要があります。この手続きを行っていないと、日本で生活していない期間も、住民税や国民年金、国民健康保険を支払わなければならなくなります。一人暮らしの場合は、通常の引っ越しと同様に、ガス、電気、水道、電話、新聞、インターネットのプロバイダ契約の休止手続きを行います。ガスや電気は、例え利用しなくても基本料金を支払わなければならないので、休止してから出国するようにしましょう。
郵便物の転送は、窓口や専用はがきの投函、郵便局のサイト「e転居」で簡単に手続きをすることができます。旧住所あての郵便物を1年間希望の場所に転送できるので、実家などに転送するよう、手配しておくと安心です。「e転居」は転居後にも手続きすることができます。航空券の予約も忘れないよう確認が必要です。仕事を辞めてワーキングホリデーに行く人は、退職時に必要な手続きを行っておきましょう。厚生年金、社会保険に入っている場合は、国民年金、国民健康保険への切り替えが必要です。
退職から出国までの短い期間とはいえ、きちんと手続きをして無保険状態にならないように気をつけておきましょう。保険に関しては会社の任意継続が使える場合もあります。退職時に担当者に確認すると確実です。
ワーキングホリデーで海外に渡航するにあたっては、計画的にスケジュールを組み、順序立てて手続きを進めていかなければなりません。ワーキングホリデービザの申請自体は順調にいけば時間がかかるものではありませんが、トラブルもつきものです。
海外生活の最初の一歩になる手続きなので、滞在する国と期間が決まったら早めに申請すると安心です。ビザ申請に必要なものをそろえることや、ビザ、パスポートの有効期限を確認すること、航空券、滞在先の手配などすることはたくさんあります。
こうした手続きを進めながら、同時に行いたいのが、1年間の滞在期間をどのように行動するかを熟慮することです。目標を出国前に考えていくことで、将来のキャリア形成や、なりたい人物像につながる経験を渡航先ですることができます。1年間の滞在期間はあっという間に過ぎてしまいます。「TOEICで900点以上を取る」など具体的な目的を立て、日々それを意識して生活することが大切です。
ワーキングホリデーが終了した後に「ワーホリに行って本当に良かった」と思えるように、渡航目的についてじっくりと考える余裕も大切です。
18~30歳というこれからの人生を左右する時期に体験する1年間のワーキングホリデーは、多くの刺激を与えてくれる貴重な期間です。海外生活の良いスタートがきれるよう、十分な準備をして時間に余裕をもってスケジュールを組みましょう。
またこちらの記事で、オーストラリアのビザの種類や申請手順などについてまとめていますので、オーストラリア留学にご興味のある方はぜひこちらも合わせてご覧ください。
海外渡航経験の少ない方にも自信を持っておすすめできるのが、気さくでフレンドリーな人柄が魅力のオーストラリア。 多文化・多民族国家であるゆえ、馴染みやすく、何度も訪れたくなる心地よさがあります。 期間や渡航スタイルの選択肢が広く、短期留学やワーキングホリデーなど自分に合った形を選ぶことができるのもメリットです。