留学するにあたり、心配なのが現地で使うお金です。海外にはキャッシュレス化が進んでいる国も多く、海外留学の際にはクレジットカードが欠かせません。
常に現金を持ち歩くよりも、クレジットカードを1枚所持していたほうが便利で安全です。海外におけるクレジットカードは、身分証の代わりにもなります。しかし、初めてカードを作る学生や、海外でカードを使ったことのない人にとっては、不安な点も多いでしょう。
紛失や盗難、不正利用なども心配です。そこで、クレジットカードのメリットや海外で利用する際の注意点、クレジットカードの選び方などを紹介します。
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留学する際、現地で使うお金を持って行く方法は1つだけではありません。
基本的には現金、クレジットカード、海外送金の3種類です。現金を持って行く場合は、「あらかじめ日本で日本円を現地の通貨に換金するか」「現地に着いてから日本円を換金するか」という2通りの方法があります。
通貨の両替は銀行や郵便局、空港など、さまざまな場所でできますが、日本で換金する場合はどの施設を利用しても、手数料にそれほど大きな違いはありません。なるべく手数料を抑えたいのであれば、留学先の換金所で換金するのが一番お得です。
しかし、換金所で働いているのは当然ながら現地に住む人です。都市部の大きな銀行や空港の換金所でも、日本語が話せるスタッフがいるとは限りません。その場合、換金方法や手数料などの説明も英語で受けることになります。日常会話が可能なレベルの英語力がなければ、現地での換金は難しいでしょう。
さらに、土地勘のない場所で、すぐに換金所を見つけられるかどうかはわかりません。
郊外に留学した場合、換金するためにわざわざ都市部まで出なければならない可能性もあります。現金は日本で必要最低限の金額を換金し、留学先まで持参したほうが無難です。ただし、大量の現金を持ち歩いていると、スリや置き引きのターゲットにされたり、犯罪に巻き込まれたりするおそれがあります。
渡航時に持って行く現金は多くても2万円程度にとどめましょう。
短期の旅行なら日本で用意した現金だけでも足りるかもしれませんが、留学する場合はそれだけでは不十分です。
そこで、留学生活で役に立つのがクレジットカードです。海外では、クレジットカードは単なる買い物をするためのツールではありません。たとえば留学先で旅行に行くことになった場合、ホテルにチェックインするときやレンタカーを借りるときなど、さまざまな場面でカードの提示を求められるでしょう。
それは、クレジットカードが身分証の代わりでもあるからです。特に現地の身分証や免許証を持たない外国人や旅行者は、クレジットカードがないとなかなか信用を得ることができません。
場合によってはホテルでの宿泊を断られたり、買い物ができなかったりすることもあります。支払い能力があることを示し、正当なサービスを受けるためにも、クレジットカードは必要です。クレジットカードには学生向けのカードもあるので、持っていない人は渡航前に作っておきましょう。
海外送金を利用する場合は、少し複雑な手続きが必要です。まずは、渡航前あるいは渡航後に、留学先の銀行に口座を開設します。
英語力にあまり自信のない人は、なるべく日本にいる間に口座を作っておいたほうが良いでしょう。口座を開設したら、日本の口座から留学先の口座へお金を振り込んでおけば、現地の通貨を引き出すことができます。
送金方法は銀行や郵便局の窓口を利用するほか、インターネットバンキングからも手続きができます。
ただし、海外送金を利用すると、日本の銀行と海外の銀行の双方で手数料が発生します。手数料は送金時の為替レートにもよりますが、平均して5,000~1万円ほどです。
少額のお金を何度も振り込むと、手数料だけで大変な額になってしまうでしょう。為替レートが低いタイミングを狙ってまとまった金額を送金したほうが、手数料を節約できます。
日本でもクレジットカードは普及していますが、日常生活のこまごまとした買い物は、現金払いが主流です。
日本での生活に慣れていると、買い物の際に現金が手元にないと不安に感じる人もいるでしょう。しかし、留学生活においては、現金を換金するよりもクレジットカードを利用するほうがお得です。
円から外貨への両替は手数料が高く、こまめに換金するのはおすすめできません。手数料は外貨の種類によっても変わりますが、大体3%前後と考えておけば良いでしょう。
しかし、手数料を抑えるために一度にまとまった額の現金を換金すると、紛失や盗難などのリスクも高くなってしまいます。
一方、クレジットカードの利用手数料は、およそ1.6%ほどです。現金が必要になった場合も、現地のATMからキャッシングをすれば、換金所を利用するよりもはるかに安い手数料で現金を引き出せます。
さらに、クレジットカードは使うほどポイントやマイレージがたまっていくのも大きなメリットです。たまったポイントは現地での買い物や旅行の際に使うこともできますし、帰国したあとに使うこともできます。
また、海外にはクレジットカード払いが主流の国も多いです。地域によっては現金よりも、クレジットカードのほうが信頼度としては高い場合もあります。
たとえば、留学中に旅行に行くことになったら、ホテルを予約しなければいけません。ホテルによってはチェックイン時に、クレジットカードの提示を求められることがあります。
このときにクレジットカードを所持していないと、保証金を支払わなければいけません。保証金は何事もなければ最終的に返還されますが、保証金の説明や支払いに時間をとられてしまうことは確実です。
不要な手続きを避けるためにも、クレジットカードは持っておいたほうが良いでしょう。
海外の通貨の種類は、日本よりも複雑です。日本の通貨は円で統一されていますが、アメリカならドルとセント、イギリスならポンドとペンスというように、複数の単位があります。
さらに、紙幣や硬貨にもいくつかの種類があり、すぐに見分けるのは大変です。現地の通貨に慣れるまでは、計算に手間取ることでしょう。
しかし、クレジットカードを利用すれば、留学初日でもスマートに支払いができます。いちいち現金を計算する必要もなく、支払いに時間がかかって周りを待たせてしまうこともありません。クレジットカードはスーパーやドラッグストアで買い物をするときだけでなく、インターネットの通販や公共料金の支払い、飛行機や電車の予約にも使えます。
ポイントやマイルを利用すれば、現金よりもお得に買い物をすることも可能です。
また、現金を管理する場合は、1日にいくら使い、手元にいくら残っているかを常に記録しておかなければいけません。
うっかりレシートや領収書を紛失してしまったり、記録するのを忘れたりすると、途端に採算が合わなくなってしまいます。クレジットカードならインターネット上で明細書を管理できるので、「いつ」「どんな用途で」「いくら使ったのか」をすぐに把握できます。
しかし、現金とは違い、クレジットカードはお金の増減が見えないので、無駄づかいが心配という人もいるでしょう。留学して間もないころは、生活に必要なものを調達するために、一時的に利用額が上がることもあるかもしれません。
しかし、明細書を見て月々の利用額を比較すれば「今月は使い過ぎたから、来月は節約しよう」というように、計画的にお金を使うことができます。
明細書にはカードを使った場所や購入した品目、利用額なども詳細に記載されています。また、ポイントがどれくらいたまったかも確認できるので、月々の明細には必ず目を通しておきましょう。
使い過ぎてしまったら翌月は出費を抑えるなど、計画的に使うことが重要です。現地での生活に慣れてくれば、突発的な出費もだんだんと減ってくるでしょう。
そのころには、自分か1カ月の間に、平均してどれくらいのお金を使っているかもわかるはずです。月々の予算を決めれば、無駄遣いの防止になります。こまめに記録をつける自信がない人や、無駄づかいが心配な人こそ、上手にクレジットカードを活用しましょう。
海外留学の際に特に心配なのが、お金の紛失や盗難です。都市部や観光地には治安の悪い場所もあります。
特に留学生や旅行者はスリやひったくりの標的になりやすいので、日ごろから防犯意識を高めておくことが大切です。しかし、どれだけ警戒していたとしても、被害に遭ってしまう可能性がまったくなくなるわけではありません。
紛失や盗難が起きてしまったときのことを考慮すると、現金よりもクレジットカードのほうが安心です。
現金を紛失したり、盗まれてしまったりした場合は、原則として補償がききません。
なくなったお金が少額でも高額でも、戻ってくる可能性はまずないと考えて良いでしょう。
一方、クレジットカードなら紛失や盗難によりなくしてしまっても、サポートセンターへ連絡をすればすぐに支払いを止められますし、カードの再発行も可能です。
連絡をする前に利用されてしまっていたとしても、不正利用の事実が確認できれば使われた分は全額補償されます。クレジットカード会社のサポートセンターは、海外からでも無料で連絡ができるので、通話料を気にする必要はありません
。年中無休で対応しているので、なくしてしまったことに気付いた時点で、すみやかに連絡をしましょう。万が一の場合に備えて、サポートセンターの番号を控えておくと安心です。
カードの再発行は現地で手続きが可能です。紛失後は約2週間カードが使えなくなりますが、会社によっては緊急時に限り、1~2カ月の期間限定で利用できるカードを即時発行してもらえることもあります。
紛失保険や盗難保険は、クレジットカードの契約時に自動的に付帯されるので、わざわざ契約手続きをする必要はありません。
しかし、保険が適用されるとしても、紛失後は必ず現地の警察へ届け出ましょう。警察へ届けた際の受理番号をカード会社へ連絡しないと、再発行の手続きができません。手続きを終えたあとは、身に覚えがない利用がないか明細書を細かくチェックしましょう。
留学中や留学中に海外の医療機関を受診すると、治療費は実費で支払う必要があります。
そのため、ケガや病気に備えて海外保険に加入するのが一般的です。留学生の場合は、入学時に学校側が保険を付帯してくれることもありますが、ほとんどの場合は任意で海外保険に加入することになります。
海外保険の金額は期間によって変わるものの、数万円ほどかかることは覚悟しなければいけません。そこで、役に立つのがクレジットカードに付帯される海外旅行保険です。クレジットカードの海外旅行保険は、基本的には渡航日から3カ月間適用されます。
しかし、保険適用期間を過ぎてしまっても、自動付帯と利用付帯を組み合わせることで、適用期間を伸ばすことも可能です。
自動付帯とは、カードを利用しなくても、持っているだけで保険が適用されるシステムのことです。
一方、利用付帯は、海外旅行や海外留学に必要な代金をカードで決済した場合に適用されます。適用条件はカード会社により異なるので、契約時にしっかりと目を通しておきましょう。
保険が適用される条件や保証期間も、カード会社を選ぶ際のひとつの基準になります。
クレジットカードに付帯される海外旅行保険は、基本的には傷害保険です。渡航中や滞在中に事故に遭ったり、負傷したりした場合の治療費を補償してくれます。
このほかにも病気にかかったときの治療費や、他人の物を壊したりケガをさせてしまったりした場合の賠償責任を補償してくれる保険もあります。
自分の持ち物が壊れてしまった場合の携行品損害保険や、災害に巻きこまれてしまった場合の救援者費用保険など、補償内容にはカード会社によりさまざまです。
必要に応じて保険を追加したり、カードに付帯される保険以外の海外保険を契約したりすることも視野に入れましょう。
クレジットカードがあれば、海外でも日本にいるときと同じような感覚で買い物ができます。
しかし、無制限にカードを使えるわけではありません。クレジットカードで決済したお金は、毎月決まった日に日本の銀行口座から引き落とされます。しかし、銀行口座に十分なお金がないと引き落としができず、クレジットカードも使えなくなってしまいます。
確実に引き落とせるように、渡航する前に口座の残高を確認してください。WEBで明細を確認できるカード会社も多いので、引き落とし日や引き落とされる金額を把握しておくと安心です。
万が一残高が足りなくなったら、早めに日本にいる家族に連絡をとり、口座に入金してもらいましょう。
さらに、残高だけでなく、為替レートにも気をつけなければいけません。
為替レートとは日本円を外貨に換金する際の交換比率のことです。為替レートは常に変動するため、留学期間中ずっと同じとは限りません。渡航時よりも相場が上がることもあれば、下がることもあります。為替レートが下がるぶんには問題ありませんが、上がってしまった場合、無駄づかいをしているつもりがなくても、いつの間にか出費が多くなってしまいます。
滞在中は現地の物価だけでなく、為替レートにも常に注目しておきましょう。
クレジットカードには利用限度額があります。たとえ、口座に十分な残高があっても、設定した限度額以上の買い物はできません。
特に学生向けのクレジットカードは限度額が低く設定されていることが多く、10~30万円程度である場合が多い傾向です。もし、飛行機のチケット代をクレジットカードで支払おうとしたら、それだけで限度額に達してしまう可能性があります。
限度額を超えるとカードが使えなくなってしまうので、そのような事態を防ぐためにも、あらかじめクレジットカードの増額手続きをしておきましょう。増額手続きを行うと、クレジットカードの利用限度額を引き上げることができます。
増額手続きはインターネットか電話から申し込めますが、学生は書面での手続きが必要な場合もあります。
まずは、カード会社に連絡をして手続きの方法を確認してみましょう。増額手続きの際には使用用途や増額する期間や増額希望の金額を聞かれます。留学中に使うお金は生活費だけとは限りません。身内に不幸があり、緊急で帰国しなければならない場合もあるかもしれません。
予想外の出費に備えて、必要な金額に30万~50万ほどプラスした金額を申請しておくと安心です。ただし、学生向けカードの中には、利用限度額の増額ができないものもあります。契約をする前に、増額が可能か確認しておきましょう。
なお、利用限度額の増額は、申請したらすぐに適用されるわけではありません。審査が完了するまで1~2週間ほどかかります。
現地に着いたらすぐにクレジットカードを使えるよう、早めに手続きを済ませておきましょう。ちなみに、留学中も増額手続きは可能です。一時利用枠引き上げを利用すれば、1カ月間ほどの期間限定で増額ができます。
電話かインターネットで申し込めば、申請した当日または翌日には増額されるので、緊急でお金が必要になった場合に便利です。ただし、利用実績が半年に満たなかったり、支払いが延滞した月があったりすると、審査に通らない場合があるので注意しましょう。
また、一時利用枠引き上げは、何度も使える手段ではありません。普段から使った金額や口座の残高を把握し、計画的な利用を心がけましょう。
クレジットカードは便利なだけではありません。現金と同じく、持ち歩くことによるリスクがつきものです。
紛失や盗難によりカードをなくしてしまったり、利用限度額オーバーによりクレジットカードが止まってしまったりする可能性があります。このようなリスクを避けるためにも、クレジットカードは最低でも2枚以上持って行きましょう。
複数のクレジットカードを所持していれば、1枚は買い物用に持ち歩き、1枚は予備として家に保存しておくなどの使い分けが可能です。
万が一、クレジットカードを紛失したり、盗難の被害にあったりしても、予備のクレジットカードがあれば再発行までの期間も安心して過ごせます。
クレジットカードを複数枚持っていれば、海外旅行保険の補償額を合算できるのも大きなメリットです。盗難に遭った際はなくしたカードだけでなく、所持しているすべてのカード会社に補償の申請をしましょう。
紛失や盗難のほかにも、限度額オーバーや有効期限切れでカードが止まってしまう可能性があります。
持って行くカードは、できるだけ有効期限が離れているものを選ぶと良いでしょう。もし、滞在中にカードの有効期限が切れて使えなくなってしまっても、有効期限が残っている別のカードを使えば問題ありません。
ただし、予備のカードがあったとしても、1枚でもなくしてしまえば不正に利用される危険があります。
予備を含め、1枚1枚のカードをしっかりと管理しましょう。また、メインで使っているカードの利用額だけを気にして、予備のカードを使ったことを忘れてしまうと、口座の残高が足りなくなるおそれがあります。
カードを2枚以上持って行く場合は、「どのカードでいくら使ったのか」を常に把握しておきましょう。
クレジットカードには、国際ブランドと国内ブランドがあります。
国際ブランドとは世界のあらゆる国で使えるカードのことです。VISAやMaster、JCB、アメリカンエキスプレス、ダイナースクラブは世界5大ブランドといわれています。
一方、国内ブランドとは主に日本で普及しているブランドです。ニコスカードやDCカード、セゾンカード、オリコカードなどが国内ブランドのクレジットカードにあたります。
ただし、国内ブランドのクレジットカードでも国際ブランドと提携し、海外でも利用できるようになっているカードも多い傾向です。
「国際ブランドと提携しているか」は、カードを見ればわかります。VISAやMasterなどのマークが入っていれば、そのカードは海外の国際ブランド加盟店でも使えるカードです。
留学時に複数枚のクレジットカードを持って行く場合は、国際ブランドの異なるカードを持って行きましょう。国際ブランドは世界中のどんなお店でも使えるわけではありません。
ブランドにより利用できるお店が異なります。違うブランドのカードを所持していれば、普段から使っているクレジットカードが使えない店があったとしても、別のブランドのカードで支払いが可能です。
特におすすめのブランドはVISAです。VISAは国際ブランドの中でも特に加盟店舗数が多く、ほぼ全世界で使えます。
同じ国際ブランドでも、JCBやアメリカンエキスプレス、ダイナースクラブは、VISAやMasterよりも使える場所が限られてしまいます。
ただし、決して留学時に持って行ってはいけないというわけではありません。アメリカンエキスプレスはアメリカでは加盟店が多く、トラベルサービスや海外旅行保険が充実しています。たとえ、使う機会が少なくても、持っているだけで助かる場面もあるでしょう。
それぞれのブランドのメリットとデメリットを知ったうえで、自分にとって使い勝手の良いブランドを選びましょう。
海外留学でクレジットカードは必須のツールです。使い過ぎや紛失に注意すれば、あらゆるシーンで活躍することは間違いないでしょう。
ただし、どのカードがベストなのかは、留学する国や契約する本人の年齢、収入などにより異なるため、一概にはいえません。海外旅行保険の補償内容や為替手数料も、ブランドによって違います。
年会費無料のカードや海外利用分のキャッシュバックがつくカードなど、学生でも持ちやすいカードもあります。
留学前にクレジットカードに関する知識を身につけ、賢く使いこなしましょう。