海外に留学したいと考えたとき、「留学ビザが必要なのではないか」と何となく想像がつく人は多いでしょう。もっとも、先進国である日本は各国からの信頼度も高いため、現在では多くの国で入国の際にビザが免除されています。
このため、「観光目的の場合はビザが不要で、留学や就労目的の場合はビザが必要」というざっくりとしたイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、いくら日本が信頼を得ているといっても、国によっては観光目的でも入国の際に必ずビザを要するところもあります。反対に、留学目的であっても短期滞在である場合にはビザを要しない国もあります。また、ビザの種類や、ビザを取得するための申請に必要な書類や資格も国によって少しずつ変わってきます。
このように、ビザの要不要および申請方法については国ごとに条件が異なります。したがって、海外留学をする際には、自分が行きたい国について、入国の条件や申請方法についてあらかじめきちんと調べておく必要があります。
そこで、留学生から特に人気の留学先をピックアップし、留学ビザの概要と申請方法について国別に解説していきます。
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オーストラリアへの留学する場合、滞在期間が3カ月以上に渡る場合は、学生ビザを申請する必要があります。学生ビザを取得するためには、政府が認定する学校で、指定のコースをフルタイム(週25時間以上)で受講し、各タームの80%の出席率をクリアすることが条件とされています。
この条件をクリアできないと、学校から移民局に通達が行き、学生ビザがキャンセルとなる場合があるので注意が必要です。条件がクリアできていれば、ビザの延長をすることが可能です。受講期間中はオーストラリアに滞在することができ、学生ビザを取得すると、労働許可(ワークパーミッション)が付与され、週20時間までの就労が認められます。
これにより、アルバイトで学費を稼ぎながら学校に通うことができるというわけです。
オーストラリアの学生ビザは、オンライン申請(eVisa)で受け付けています。申請時には、パスポート、入学許可番号、経歴、OSHC(海外留学生健康保険)、クレジットカードが必要なので準備しておきましょう。クレジットカードは、親族名義のものも利用可能です。
また、オーストラリアの学生ビザは、申請場所が国内か国外かによって申請できる期間が異なります。申請場所が日本国内であれば、コース開始日より4カ月前(124日前)から受付可能です。オ―ストラリア国内の場合は、コース開始日より、3カ月前(93日前)から受付しています。
学生ビザ発給までにかかる日数は、必要書類提出後2~10日程度が通常ですが、移民局の状況によっては日数が多くかかる場合もあります。余裕をもって早めに準備するようにしましょう。
ニュージーランドに留学する場合、3カ月未満の滞在であれば学生ビザの取得は不要です。3カ月以上の長期留学をする場合に学生ビザの取得が必要となります。
ビザ取得の際には、教育審査・諮問機関NZQA認定校の入学許可証が必要です。
ニュージーランドでは14週間以上の学生ビザを取得すると、NZQA Category1の学校であれば週20時間のパートタイム就労ができます。これにより、働いて生活費や学費を稼ぎながら学校で勉強することが可能となります。更に、博士、修士の研究生であれば制限のない就労権利が与えられます。
学生ビザ取得に必要な書類には、学生ビザ申請書、パスポート、写真、残高証明、入学許可証、学費支払証明書、宿泊証明書、ニュージーランド出国の航空券またはその支払証明書、健康診断書、レントゲン受診証明、無犯罪証明書、VFSチェックリスト等があります。これらに、申請料や郵送返却料金等の費用がかかります。申請書類や費用は、留学者の年齢や留学条件によって異なりますので、自分に合った申請方法を確認しておきましょう。
また、状況によって必要な申請書類に変更がある場合もあります。ビザ取得の際には必ず留学先の学校に最新情報を確認するようにしましょう。
カナダへ入国するためには、eTA(電子渡航認証)の取得が必要です。
6カ月を超えてカナダに留学したい場合は、就学許可証(Study Permit)が必要です。なお、ケベック州に関しては追加の書類が求められますので気を付けましょう。
6カ月以内の留学の場合であっても、「就学期間が半年以下(短期留学)である証明」が必要になります。これが認められるためには、カナダでの勉強を認可された滞在期間内に完了しなければなりません。カナダ入国時に、カナダの教育機関が発行した「入学許可書」または「コース登録証明書」を準備しておいてください。入国の際に審査官がこれらの書類を審査する場合があります。
また、当初は6カ月以内で申請していても、カナダで6カ月を超えて勉強する意思を持っている場合や、公立の教育機関または学位授与資格のある私立の教育機関でフルタイムで就学し当該教育機関のキャンパス内で働きたいという意思がある場合、履修するコースに必須の実習プログラムが含まれている場合は、就学許可証が必要となりますので注意が必要です。
現在、査証申請はカナダ市民権・移民賞(CIC)のホームページからオンライン申請をするか、または、在フィリピン・カナダ大使館にて申請する方法があります。
アメリカに留学する場合は、原則として日本で学生ビザを取得する必要があります。
学生ビザにはFビザとMビザの2種類があり、Fビザにはさらに、留学する本人が真正するF-1ビザと、留学生に同行する家族用のF-2ビザがあります。語学学校や大学へ通う場合はFビザ、専門学校に通う場合はMビザが必要であることが多いです。週18時間以上語学学校の授業を受ける場合、F-1ビザが必要となります。
アメリカ留学で学生ビザを申請する際に他の国と異なるのは、一部の例外(13歳以下または80歳以上の申請者)を除いて面接が必須であることです。申請に必要な書類を揃えたうえで、管轄の大使館や領事館で面接を受けます。
面接は1対1の形式で、英語または日本語で行われます。申請書類に不備があった場合のチェックが主な質問なのであまり難しいことは聞かれません。滞在の目的、滞在期間、滞在先などの項目について英語で答えられるよう準備しておくとよいでしょう。
面接を受けてからビザが発行されるまでの期間は、通常1~2週間程度ですが、日本の学校が長期休みに入る前などの申請者の多い時期や、大使館の状況によっては発行に時間がかかることもあります。アメリカは特に人気の留学先であり、多数の応募が見込まれますので、それだけビザの審査に時間がかかる可能性が高いといえます。
余裕をもって申請するようにしましょう。
イギリスに留学する場合、6カ月以内の留学であれば、日本でビザを取得する必要はありません。6カ月を超えて留学する場合にビザが必要となります。
6カ月以上滞在する場合のビザの種類は以下で紹介する2種類あります。求められる語学力の要件や現地での期間の延長などが異なりますので、取得にあたっては、どちらが自分に向いているか検討する必要があります。
一つ目はSTSVです。6カ月を超えて11カ月以内の語学留学をする場合に事前取得する必要があります。語学力は求められませんが、ビザ期間の延長をすることはできません。
もう一つはTier4です。11カ月を超えて留学する場合に取得する必要があります。取得には相応の語学力が求められます。Tier4を取得すると、ビザ期間の延長が可能です(ただし、状況により延長が認められない場合もあることに留意してください)。
英語学習のための留学先として注目されているのが、南ヨーロッパにあるマルタ島です。
マルタに留学する場合、滞在が90日以内か91日以上かでビザの要不要が決まります。
90日以内の滞在であれば、学生ビザは不要です。マルタに到着したら、空港でパスポート(3カ月以上の有効期間のあるもの)と復路の航空券を提示し、宿泊ホテル等を入国カードに記入して申請します。そうすれば空港の審査官がその場で短期入国ビザを給付してくれます。
91日以上滞在する場合、日本でビザを申請する必要はありませんが、現地に到着してから一時滞在許可証の申請が必要となります。なお、現地で滞在許可証を申請する場合でも、入国時には復路の航空券を提示する必要がありますので準備しておきましょう。
また、現地で滞在許可証を申請するために必要な書類は急遽変更されることもあります。現地に到着したら、語学学校に連絡し、最新の情報を確認しておくとスムーズです。
アイルランドに留学する場合、90日以内の滞在であれば学生ビザは不要です。日本国籍を持っている人であれば、事前に日本でビザを取得する必要はなく、アイルランドで入国審査を受ければ観光客と同じく90日の滞在許可を受けることができます。
アイルランドの入国審査はそれほど厳しくないといわれていますが、必ず事前にアイルランド大使館のホームページをチェックして、入国に際しての最新情報を確認するようにしましょう。
90日以上滞在する場合は、アイルランドに入国後、ビザの有効期間内にThe Garda National Immigration Bureauや所管の警察署で外国人登録手続をする必要があります。
また、イギリス経由でアイルランドに入国する場合の入国審査はイギリスで行われ、イギリス以外の国を経由してアイルランドに入国する場合の入国審査はアイルランドで行われます。自分がどの経由でアイルランドに入国することになっているのかきちんと把握しておきましょう。
また、現地で外国人登録する際に必要な書類には時々変更が生じることがありますので、語学学校に連絡をして最新情報を確認しておくようにすると安心です。
フィリピンへの留学期間が30日以内の場合はビザの申請は必要なく、現地の空港で入国審査を受けるだけです。
ただし、30日以内であっても、語学研修等を受ける場合には、SSP(Special Study Permit)が必要です。
このSSPは日本で申請することはできないので、フィリピンに到着後に入国管理局で申請するか、もしくは留学先の学校から申請することになります。SSPの有効期限は半年なので、それ以上フィリピンに留学をしたい場合には、半年ごとの更新が必要になります。フィリピンの語学学校はほとんどがSSPの申請を代行してくれます。もっとも、SSPの申請費を請求しておきながら、SSPの申請代行をしていない学校も存在しますので、学校選びをする際には慎重に判断しましょう。
フィリピンに31日以上59日以内で滞在する場合は、短期渡航者用ビザ9(A)を取得することで滞在が可能となります。60日(2カ月)以上滞在する場合はビザの延長手続をしましょう。
SSPを取得する場合、またはフィリピンに60日以上滞在する場合には、ACR I-CARD(外国人登録IDカード)の発給も必要です。このカードは移民局にて申請・取得が可能です。ACR I-CARDを日常で提示を求められる場面はあまりありませんが、出国時の空港で返還する義務があります。その際にカードを保持していないと罰金を課せられる場合がありますので気を付けてください。
以上のとおり、ひとくちに留学ビザといっても、国によってその取得条件や申請方法が少しずつ異なります。アメリカのように、ビザ申請の際に面接を課す国もあります。
「3カ月未満」など短期間であればビザ申請が不要の国もありますが、そのような国でも滞在許可証などの特別な許可証が必要になるケースもありますので、きちんと確認することが重要です。
また、ビザが不要であっても、旅券法第16条により、海外に住所や居住を定め3カ月以上滞在する場合は必ず在留届を提出しなければなりません。在留届を提出していれば、事故や事件、自然災害等に万が一巻き込まれた場合の安否確認に役立ちますので覚えておきましょう。
また、ビザ取得に必要な書類や申請方法は、国によって異なるのみならず、同じ国であっても状況によって変わることがあります。詳細は日本国内にある渡航先の大使館や総領事館、または留学先の学校にて確認してください。
その際、フィリピン留学の項目でも紹介しましたが、ビザ申請の代行を謳っておきながら、料金だけを請求するという悪質な学校も中には存在することに留意してください。学校選びを慎重にすることはもちろん、代行してくれるからといって全てを学校任せにするのではなく、自分自身でもビザ取得の流れを把握することが大切です。
どの国に留学するにしても、出発する直前になって慌てないよう、事前に最新情報を確認し、早めに準備しておくよう心がけましょう。それこそがビザ取得を成功させるコツなのです。